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3月9日  【A3】

第22章 大白


 「わぉ、カッコウのリョウダヨ」
 「結構な量。何コレ、誰から?」
 「真澄、さすがだヨ!」
 「自称1番のファン。というか、頑固オタク。
 三角〜っ」

 ひょいっとどこから湧いて出たのか、水色の触覚が揺れる。

 「こっちはお前の」
 「わぁ、三角いっぱい!きれ〜」
 「寮を出た日数ぶんのお土産」

 そう言うと、珍しく眉を寄せた。

 「ばんり、ありがとう」
 「顔と一致してないんだな、言葉が」
 「なんて言ってた?」
 「帰らないの一点張り。馬鹿だからあの人」
 「なに?なんの話??」
 「そっかぁ〜、しょぼ〜んっ」
 「万里くん、こっちはなんですか??」
 「椋、それは肉じゃが。余ったから持ってけって。
 食って良いけど、至さんにも少し残しておいてやって」

 賑やかな談話室、たしかに、芽李さんがいなくても変わんないのかもしれないけどさ。

 「このケーキうま!」
 「うん!絶対芽李さん好きだと思う」
 「たしかに!」

 みんなどっかで戻ってくるって思ってるんだよ、アンタのこと。
 だから、こうやって笑って待ってんのに。
 強情なんだよ、ほんと。

 「咲也は?」
 「部屋で勉強してるよ!」
 「じゃあ、差し入れてやっかな」

 余計なお世話かと思いつつ、少しだけ肉じゃがを盛って、それからケーキと飲み物を持って。

 考えたら食い合わせ悪ぃな、…まぁいっか。

 などと考えながら、101号室のドアを開けた。

 「咲也ー、はいんぞ」
 「あ、万里くん」
 「小腹減らねぇ?」
 「ちょっとだけ」
 「だと思った。差し入れ」
 「肉じゃが?と、ケーキ?」
 「ん」

 コテンと首を傾げるしぐさ、芽李さんに似ててやっぱり姉弟なんだなって、思う。

 「ありがとう、万里くん」
 「いや」
 「万里くんは食べないの?」
 「結構腹いっぱい食ってきたんだよ、遠慮しないで食え」
 「うんっ、じゃあいただきます」

 肉じゃがをパクッと一口。
 そして、箸を置いた。

 咀嚼して俯いた咲也。

 「万里くん」

 第一声、なんて言うか少しだけ怖いもの見たさなところは確かにあった。

 もちろん、喧嘩した旨はさっき芽李さんに聞いた。

 でも、普段キレねぇ奴がキレッとおっかないって、まじなんだな。

 「誰とたべてきたの?」

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