第22章 大白
「もう帰んの」
「ケーキもコーヒーも飲んだし、万里くんと話せて楽しかったよ」
カフェの前、万里くんは大きな袋を二つ持って。
「ごめんね、荷物増やしちゃって」
「そう言うなら、半分持ってくれよ」
「やだ」
「頑固」
「そーだよ。咲にも言われた。でも、曲げられないから、ごめんね」
「つまんねぇ」
「万里くんも食べて良いからね、チーズケーキ入ってるから臣君に作ってもらいなよ」
「芽李さんと食いてぇ」
「万里くんって、可愛いね」
「な」
「咲の次にね。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「送る」
「いいよ、まだ明るいし」
「送る」
「…わかった。ありがとう」
どこか嬉しそうに隣に並んで、わかればいいんだよ、とかなんとか言ってる。
他愛もない話をしながら帰った。
万里くんはずっと戻ってこいって言ってくれたけど、やっぱりそう言うわけにはいかないからと、私も折れることなく返した。
「ここで良いよ」
花屋の前、立ち止まって言う。
「ん」
面白くなさそうな万里くんに、ごめんと謝った。
「なんのごめん?」
「折れてあげられなくて、ごめん」
「クソが」
俯いた万里くん。
そんな顔することはないのに。
「あらあら?万里ちゃんも来てたの?」
タクシーから降りたおばあちゃんが私たちに声をかけた。
「毎日すみません。やっと芽李さんに会えました」
「良かったわねぇ、お話できた?」
「はい。じゃあ、俺はこれで」
「万里ちゃん、お夕飯、食べていきなさいよ。良かったら」
「え?」
「なぁに、芽李ちゃん、いいでしょう?2人分も3人分も作るテマはそんなに変わらないわよ」
「そうです、けど」
「万里ちゃん、おばあちゃんが左京ちゃんに電話してあげようか?」
「あ、いえ、それは大丈夫です。
いいんですか、お邪魔しちゃって」
「もちろんよ、嬉しいわ。男の子っていっぱい食べてくれるから、作り甲斐があるのよねぇ。腕がなるわ」
「だって、芽李さん」
「…わかったよ。好きにしなよ」
「やり〜。臣に連絡しねぇとっ」
るんるんで携帯をいじった万里くん。
「芽李さんも何がつくんだろ?」
「それはもちろんだけど」
「俺も手伝う」