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3月9日  【A3】

第22章 大白


 「もう帰んの」
 「ケーキもコーヒーも飲んだし、万里くんと話せて楽しかったよ」

 カフェの前、万里くんは大きな袋を二つ持って。

 「ごめんね、荷物増やしちゃって」
 「そう言うなら、半分持ってくれよ」
 「やだ」
 「頑固」
 「そーだよ。咲にも言われた。でも、曲げられないから、ごめんね」
 「つまんねぇ」
 「万里くんも食べて良いからね、チーズケーキ入ってるから臣君に作ってもらいなよ」
 「芽李さんと食いてぇ」
 「万里くんって、可愛いね」
 「な」
 「咲の次にね。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
 「送る」
 「いいよ、まだ明るいし」
 「送る」
 「…わかった。ありがとう」

 どこか嬉しそうに隣に並んで、わかればいいんだよ、とかなんとか言ってる。

 他愛もない話をしながら帰った。
 万里くんはずっと戻ってこいって言ってくれたけど、やっぱりそう言うわけにはいかないからと、私も折れることなく返した。

 「ここで良いよ」

 花屋の前、立ち止まって言う。

 「ん」

 面白くなさそうな万里くんに、ごめんと謝った。

 「なんのごめん?」
 「折れてあげられなくて、ごめん」
 「クソが」

 俯いた万里くん。
 そんな顔することはないのに。

 「あらあら?万里ちゃんも来てたの?」

 タクシーから降りたおばあちゃんが私たちに声をかけた。

 「毎日すみません。やっと芽李さんに会えました」
 「良かったわねぇ、お話できた?」
 「はい。じゃあ、俺はこれで」
 「万里ちゃん、お夕飯、食べていきなさいよ。良かったら」
 「え?」
 「なぁに、芽李ちゃん、いいでしょう?2人分も3人分も作るテマはそんなに変わらないわよ」
 「そうです、けど」
 「万里ちゃん、おばあちゃんが左京ちゃんに電話してあげようか?」
 「あ、いえ、それは大丈夫です。
 いいんですか、お邪魔しちゃって」
 「もちろんよ、嬉しいわ。男の子っていっぱい食べてくれるから、作り甲斐があるのよねぇ。腕がなるわ」
 「だって、芽李さん」
 「…わかったよ。好きにしなよ」
 「やり〜。臣に連絡しねぇとっ」

 るんるんで携帯をいじった万里くん。

 「芽李さんも何がつくんだろ?」
 「それはもちろんだけど」
 「俺も手伝う」

 
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