第22章 大白
「なってないから良いじゃん」
「そう言うところだよ、アンタ」
「どういうところ?」
「俺たちが大事に思っても、アンタ自身がアンタを大事にしないから、今回みたいなことになるんじゃねぇの」
「…っ」
「まぁいいや、話し続けるけど。
そんで、どこまで…って、そうだ。密さん記憶喪失でさ、寮の前倒れてたんだ。で、監督ちゃんが誘って劇団にはいったんだ。
演技もバチバチにうまい、人が変わったみたいなんだよ」
「そうなんだ」
「で、主演は紬さんがやるんだ。ご覧の通り、天使の役。
秋組と真逆って感じの。
残念だな、劇団戻れば綴の台本読めるのに。
幸の衣装も見れんのに」
「万里くんずるい」
「ま、ゆっくり考えるんだな」
「っていうか、天使の咲は?」
「御影さんすぐ寝ちゃうから、ちょっとしたとこ直すのに幸に駆り出されんだ、ほら」
…やば。
「え、しんど」
「第一声それかよ」
「天使って本当にいるんだね?」
「おーい、大丈夫か?」
「この羽もてづくり?」
「そう、一枚ずつ貼ってんの。俺もこの辺手伝った」
「いいなぁ」
「戻るか?」
「戻れたら良いのに」
「戻れば良いじゃん」
「稽古みたいなぁ」
「見にくれば?」
「いけないよ、もう」
「来いよ、みんな待ってる」
「万里くん」
「なに?」
「迎えに来てくれてありがとね」
「連れて帰るまでが迎えだろ。まだ終わりじゃねぇから」
「そっか、手間かけるね」
「芽李さんが戻ってくればいい話なんだけどな」
「三角くんにさぁ」
「三角?」
「寮を出た日数×三角のお土産持って帰ってこいって言われたんだ、寮でた日に」
「あぁ」
「ここ、ケーキお持ち帰りできるよね?」
「だな」
「三角くんのお土産と、冬組への差し入れで持って帰って」
「帰ってくんじゃねーの?」
「帰れないから、持って帰って。
お会計してくるから」
「いいよ、俺がだすから」
「学生に出してもらうほど、おちぶれてません。奢られてよ、今日くらい。
毎日通ってくれるんでしょ」
「ほんとずりーよな、アンタ」
「ずるくなきゃ、やっていけないよ」
「みんなにバレんじゃん、今日会ったこと」
「べつに、1番のファンからの差し入れって言ってくれれば良いよ」
「余計バレんじゃん」