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3月9日  【A3】

第22章 大白


 「その前に帰る」
 「帰さねぇ」
 「大体気まずいでしょ。こんな感じで寮出たのに、ひょいひょい戻ったら」
 「大丈夫だろ。俺も至さんも似たようなもんじゃん」
 「でも、私は役者じゃない。必要ない」
 「寮母って言ったじゃねぇか」
 「それは、まぁ、なんていうか、」
 「勝手に辞めんなよ」
 「もう、埒が開かない」
 「それは俺のセリフ」

 今回は本当に折れるわけには行かない。
 色々理由つけても、何がなんでも折れない。

 「万里くん、わかってよ」
 「わかんねぇなぁ」
 「…」
 「左京さんも、至さんも、根負けしたんだろうけど、俺負けねぇよ」

 たしかに、負けず嫌いそうだし。
 今だけちょっと、当時の十座くんの気持ちわかった気がする。

 「せめて、その婚約者に会わせてくれよ」
 「なんで?」
 「芽李さん返してくださいって、かちこむから」
 「いや物騒」
 「芽李さんが折れるまで、毎日芽李さんとこ通うから」
 「万里くん本当にやりそうで怖いんだよな」
 「やるよ」
 「私今職場でお世話になってるからさ、」
 「細かいこと気にすんな。まぁ、かしこまった話はここまでっつーことで。芽李さんが大人気なく譲らないから。
 冬組のこと聞きたいだろ?」
 「言い方に棘があるな」
 「5人揃ったぜ。あと、芽李さんが言ってた通り、丞さんもゴット座抜けてこれが、冬組のメンバー」

 携帯の画面に映し出された写真をずいっと差し出した万里くん。

 「右が有栖川誉さん、詩人っていいながら前衛的なポエムを朝から晩まで読んでる。
 で、こっちが御影密さんで、記憶喪」
 「あ、」
 「え?」
 「良かったぁ」
 「なに?」
 「御影さん、寮を出た夜、一緒に朝になるまで過ごしたんだけど、気になってたんだぁ」
 「は?」
 「公園のベンチで横たわってて、大丈夫かなって話しかけた流れで」
 「寮を出た日の前の日、アンタどうしてたんだっけ?」
 「低体温で」
 「つーか、一緒にってどこで過ごしたんだよ。公園とか言わないよな?」
 「公園のベンチで」
 「やっぱ、馬鹿かよ」
 「仕方ないじゃん、ほっとけなかったんだよ。寒いの慣れてるって強がり言うし、可愛かったし!」
 「そう言う問題じゃねぇ。また低体温なってたらどうすんだよ」
 
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