第22章 大白
「ないよ、」
「なんでだよ」
「巻き込みたくないから」
「巻き込めよ、別に困んねぇから!」
そんな目で見ないで欲しい。
余計、情けなくなるから。
「大事なんだよ、咲も、カンパニーのみんなも!」
「それ知ってるけど」
「私、最低だから、千景さんがカンパニーとは関係ないから、頼ってる」
「…」
「壊されたくないの、大事なものを。
それに、私がいてもいなくても変わんないんだってば。
だって、私、カンパニーの役に立ってないもん。
支配人じゃない、監督じゃない、本も書けないし、絵もフライヤーもかけない、服を作れるわけじゃない、音楽だって出来るわけじゃないし、料理も中途半端だし、家事だって人が増えたからみんなでできる、何もできないのに部屋だけ借りてさ、食費だってかかるし、質素倹約っていうけど、私が1番無駄では?とか」
「ふっ、」
「なんで笑うの」
真剣に言ってるのに。
「至さんと関係が気まずいから寮出たのかなって思ってたから」
「デリカシーない」
「悪い、でも、なんか…色々理由つけながら、拗ねてるだけな気もして」
「拗ねてない」
「めんどくせぇけど、なんか可愛いなって」
「万里くん変」
「それ全部至さんに言えば良かったのに」
「ダサいから言わない」
「芽李さんって、案外子供っぽいっつーか。
頭硬いっつーか、頑固っつーか」
納得いかなくて、むすっとして、ケーキを口に含む。
口いっぱいに甘酸っぱさが広がって、思わず口角が上がりそうになるのをなんとか止めた。
「うまいよな、コレ」
「まぁまぁかな」
「今度臣に使ってもらおうぜ?」
「今度はないって」
「いいじゃん、結婚するにしろ、しないにしろ、しなくても良いと俺は思うけど、寮に帰ってこいよ。
監督ちゃんもいるけど、男だけでむさ苦しいしな」
「咲もいるし、ゆきくんも椋くんも太一くんも紬さんも可愛い枠だからむさくないじゃん」
「そう言う問題じゃねぇの、帰ってきて欲しいんだよ。芽李さんに!」
「できないってば、万里くんしつこい」
「頑固」
「強情」
「馬鹿」
「馬鹿っていう方が馬鹿」
「納得いかねぇ。意地でも連れて帰る。もしくは至さんここに呼ぶ」
「は?」
「俺じゃ説得できないなら、咲也と至さん呼ぶ」