第22章 大白
「今日からフルで入ります」
「あらまぁ、大丈夫なの?」
「劇団、抜けてきたんです。
行くとこも、やる事もないので、ご迷惑じゃなければ、配達でもなんでもします!」
「迷惑なんてとんでもない。助かるわ。配達もね、昔はしていたのよ。
今は私も歳だからできてなかったけど。
ところで、住むところは大丈夫なの?」
「しばらくはホテルに泊まろうかなって」
「芽李ちゃんさえ良ければ、2階のお部屋ひとつ空いてるから使う?」
「え?良いんですか??」
「もちろん」
パタンっとウインクをして、ニッコリと笑ったおばあちゃん。
「お世話になります!」
つくづく恵まれていると思う。
左京さんが繋いでくれた縁だから、大事にしないと。
なんて思っていると、1人の男性が入ってきた。
「こんなところに花屋が。なんとも趣があるねぇ」
高級そうなジャケットを羽織り、左右不対象な鮮やかな髪。
「いらっしゃいませ」
「薔薇を一本いただけるかな?」
「はい」
荷物を適当に置かせてもらって、接客をする。
劇団を辞めた件について、おばあちゃんは何も私に聞かなかった。
咲からの連絡はない。
最後に怒らせちゃったし、もう少ししたら連絡しようと先延ばしをして仕事に打ち込んだ。
配達はお得意さんから始めた。
そのツテで、徐々に配達のお客さんも増えるかもねと、おばあちゃんが笑った。
お店の2階、おばあちゃんの住居を少し間借りして始まった生活。
2人で台所に立ったり、お花について詳しく教えてもらったり、配達に出たり、割と充実して時間が流れた。
そうこうしているうちに何日かすぎて、今日はおばあちゃんが病院へ行く日だからと、お店が休みになった。
私だけで開けても良かったけど、しばらく休んでないから休みなさいと言われて仕舞えばうなづくしかなかった。
お家にいても良かったけど、なんだかそれも違う気がして、おばあちゃんが病院の間は、どこかで時間を潰そうと、街へ出た。
フラフラと歩いているうちにたどり着いた河原。
水が綺麗で、景色もなんだか良くて、少し休憩しようと斜面に腰掛けた。
冬だから、空気が澄んでるな…。
そこではただゆっくり時間が流れていて、晴れていることをいいことにここでお昼寝しちゃおうか、なんて思ったその時。