第22章 大白
「行くところがなくて、お芝居嫌いじゃなかったら行ってみるといいですよ。
劇団員募集してるので、事情話したら多分みんな受け入れてくれます」
「みんな?」
「うん、春夏秋冬って四つの組があって、あ、旗揚げなんで、できたばかりなんですけど。
今のところは一組5人で、まだ冬は集まってないんです。
2人だけ。
他の組にも共通してるのは、優しくてあったかくて、もちろんお芝居もみんな一生懸命向き合ってて、素敵な人たちってことで。
あ、ご飯も美味しいです。
だから、良かったら行ってみてください」
取り出したのは、秋組のフライヤー。
こんなことならもっと持ってくればよかった。
たった一枚しかないから惜しいけど、まぁ、そうも言ってられないし、咲に頼めばなんとか…。
「ふーん…」
受け取って、じーっと見た後、フライヤーを返される。
「ありがとう」
「あ、うん」
「大事なんでしょ、それ。オレ、覚えたから」
「そっか」
「寝る」
「うん」
「朝まで居れば?」
「うん」
「寒いけど」
「大丈夫」
昨日はあんなに寒かったのに、今日はそこまで寒くない。
多分、猫みたいな御影さんと一緒だからか。
まぁ、防寒も完璧だしね。
朝はもうすぐそこまで来てた。
ーーー
ーー
強い朝日で目が覚めた。
御影さんはまだ寝ていた。
間も無く時報がなったから、多分今は7時ちょっとすぎ。
「んーっ、ほんとに外で寝ちゃった。
バッキバキだーからだっ」
立ち上がり背伸びをする。
外で寝るなんて物騒だけど、幸い何も取られてなかった。
「んん…」
「おはよう、御影さん」
「めい、おはよう…」
「私、そろそろ行かないと。昨日は隣、貸してくれてありがとうございました」
「オレも、ありがと。これも」
貸していたブランケットを受け取る。
「また会えるか分からないけど、またいつか」
「うん。お仕事、頑張って」
「はいっ」
職場へと向かう。
今日の帰りはホテルかどっかに泊まろう。
そう決めて、ゆっくりと歩く。
寮ではそろそろみんな起きた頃かな。
「おばあちゃん、おはようございます」
「おはよう、芽李ちゃん。早いのね」
「はい。あの、」
「どうしたの?」