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3月9日  【A3】

第22章 大白


 「行くところがなくて、お芝居嫌いじゃなかったら行ってみるといいですよ。
 劇団員募集してるので、事情話したら多分みんな受け入れてくれます」
 「みんな?」
 「うん、春夏秋冬って四つの組があって、あ、旗揚げなんで、できたばかりなんですけど。
 今のところは一組5人で、まだ冬は集まってないんです。
 2人だけ。
 他の組にも共通してるのは、優しくてあったかくて、もちろんお芝居もみんな一生懸命向き合ってて、素敵な人たちってことで。
 あ、ご飯も美味しいです。
 だから、良かったら行ってみてください」

 取り出したのは、秋組のフライヤー。
 こんなことならもっと持ってくればよかった。

 たった一枚しかないから惜しいけど、まぁ、そうも言ってられないし、咲に頼めばなんとか…。

 「ふーん…」

 受け取って、じーっと見た後、フライヤーを返される。

 「ありがとう」
 「あ、うん」
 「大事なんでしょ、それ。オレ、覚えたから」
 「そっか」
 「寝る」
 「うん」
 「朝まで居れば?」
 「うん」
 「寒いけど」
 「大丈夫」

 昨日はあんなに寒かったのに、今日はそこまで寒くない。
 多分、猫みたいな御影さんと一緒だからか。
 まぁ、防寒も完璧だしね。

 朝はもうすぐそこまで来てた。











ーーー
ーー

 強い朝日で目が覚めた。

 御影さんはまだ寝ていた。
 間も無く時報がなったから、多分今は7時ちょっとすぎ。

 「んーっ、ほんとに外で寝ちゃった。
 バッキバキだーからだっ」

 立ち上がり背伸びをする。

 外で寝るなんて物騒だけど、幸い何も取られてなかった。

 「んん…」
 「おはよう、御影さん」
 「めい、おはよう…」
 「私、そろそろ行かないと。昨日は隣、貸してくれてありがとうございました」
 「オレも、ありがと。これも」

 貸していたブランケットを受け取る。

 「また会えるか分からないけど、またいつか」
 「うん。お仕事、頑張って」
 「はいっ」

 職場へと向かう。
 今日の帰りはホテルかどっかに泊まろう。

 そう決めて、ゆっくりと歩く。

 寮ではそろそろみんな起きた頃かな。

 「おばあちゃん、おはようございます」
 「おはよう、芽李ちゃん。早いのね」
 「はい。あの、」
 「どうしたの?」
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