第22章 大白
キャリーバックに詰めたのは、最低限のもの。
フライヤーと、台本はちゃっかり持って。
あと、三角くんから貰ったさんかくくんと…。
不必要な物は、全部ゴミ袋につめて出しておいた。
この時間で掃除機はかけられないので、コロコロを軽くして…よし。
せめて一言くらいと、紙を出しペンを握ったがなんて書いていいか思いつかない。
"探さないでください"とか、"お世話になりました"とか、はたまた"ありがとうございました"とか、"さようなら"とか、どれも違う気がして。
綴くんなら気の利いた分の一つも書けるんだろうけど、生憎私にその才はないので。
"鍵はポストに入ってます"
これだな。
と、書いて、部屋を出た。
明日、咲あたりが見つけてくれるだろうなんて、無責任だな。
朝を待つ外は、真っ暗で、昨日降った雪は少し残って。
鍵を閉めた後、宣言通りドアポストへと入れた。
「さようなら、お世話になりました」
寮に一礼。
とりあえずホテルでも探すかと、駅へ向かう。
職場に近いところにしよう。
ーーーーー
ーーー
昨日とは違い、着込んだおかげで寒空の下でも凍えることはない。
…が。
「あのぅ、大丈夫ですか?」
白雪姫かってつっこみたくなるほど可愛い顔をし、真っ白い髪が雪に馴染んでる…って、分析してるところではない。
一旦寮に連れてく?
いや、鍵ポストに入れちゃったんだ。
この時間だし、ピンポンするわけにもいかないし。
「って、その前に救急車」
「…だめ」
「え?」
「呼ばないで、寝てた…だけ」
「こんなところで?」
「そう、…眠くて」
「酔ってる?」
「酔ってない。…それに、このくらいの寒さ、慣れてる」
「お家は?」
「わからない」
「じゃあ警察に」
「行かない」
「困ったなぁ。じゃあ、お名前は?」
「…御影密」
「わぉ、かっこいいお名前。私は佐久間芽李。
行くとこないなら、一緒に行く?
私も、行くところないんだ。というか、自分で出てきたの」
「眠いから…いい」
「風邪ひくよ?」
反応なしか。
「…じゃあ、朝になるまで一緒にいる」
「なんで?」
「1人じゃ寒いでしょ、余計なお世話かもしれないけど」
「…」