第21章 白妙
「ごめんなさい」
「…うん。わかった」
ボロボロと落ちる涙が答えなはずなのに、私は頭を下げて等身大の告白も、すごく嬉しいのに、私のごめんなさいと言うたった一言で全部終わった気がした。
いいんだ、これで。
「芽李、俺が言ったこと、芽李を苦しめるなら、さっさと忘れていいからね」
「至さん」
「ん?」
「ううん。なんでもない。お願い、あるんだけど…いいかな?」
「なに?」
「いづみちゃん、呼んでもらってもいい?」
「わかった」
パタンと、ドアが閉まる。
至さん、私も初恋だったよ、なんて。
こっそりと思うだけは許されるかな。
いづみちゃんは割とすぐ来てくれた。
トントンと、2回ドアが叩かれて遠慮がちに開く。
「いづみちゃん、来てくれてありがとう。
今回もお騒がせしてごめんね」
「とんでもない、体調はどう?」
「うん、大丈夫そう。
…あのね、話があるんだ」
「うん」
「寮、出ようと思う」
「え?」
「あー、いやぁ、うん。
冬組のね、公演終わってからにしようと思ったんだけど、そしたらすぐに春が来ちゃうでしょう?
春は、咲達の季節で、私が1番…思い入れがあるから、…」
「どうして?」
「未練、断ち切れなくなっちゃうから。ごめん、劇団と関係ないことで、…どうせ、居ても役にも立てないんだけど、…MANKAIカンパニーのことはずっと好きだよ、ずっと応援する。
居心地が良くて、長居しちゃったけど、本当は支配人に泊めてもらってただけなの。
だから、…いづみちゃんが監督になってくれて良かった。
支配人の悲しい顔、弱いんだ…わたし」
「理由になってないよ、いつ行っちゃうの?」
「明日にでも、荷物まとめる」
「咲也君は?」
「今日話す。みんなには、言わないで」
「…芽李ちゃん、」
「いづみちゃん今までお世話になりました。
ありがとうね」
「ん…」
トントン
「監督います?電話です」
綴君の声。
「あ、うん」
「ごめんね、来てもらって」
「ううん」
「ほら、電話でしょ?」
「うん」
ずるいな、私。
ごめんね、いづみちゃん。
納得いかないような表情。質問もできないくらい、私が一方的に話して、タイミングのいい電話、って思った最低だ、私。