第21章 白妙
「6つしたの弟が、帰ってくるのを待ってるって。
親戚に引き取られて行った弟と、俺を重ねるんだ、その子。
だから、ほっとけなくて助けたって。
笑っちゃうよね、あの時の6歳って結果差があったと思うのに。
苗字までは覚えてなかったけど、その子の名前が芽李っていうことと、弟が咲也って名前だったことは覚えてたんだ。
"咲也"って名前珍しいじゃん。
だから、」
「…」
「待っても来ないなら、芽李を連れて俺が迎えに行けばいいっていったの、芽李は覚えてないかも知れないけど、…
でも、結局芽李は自分で見つけちゃったね、咲也のことも」
むくりと、布団から出る。
至さんがどんな顔をしていたのか、少しだけ気になったから。
「やっと顔見れた」
そっか、至さんはこんな顔で私を見てくれていた、なんて、今更実感した。
冷たい表情も、すっと消えた気がした。
なんであんな一回のことで、気にして、留まって、本当に情けない。
未練になるからやめて欲しいのに、安心しちゃう。
「至さん…」
「ん?」
「私、言ったよ」
「なに?」
「結婚するって、言ったよ」
「うん、聞いた」
「至さんじゃない人と、するんだよ。
その人は、その人は」
言葉が詰まる。
なんで優しい顔して聞くの、なんて、矛盾してめんどくさい気持ちが湧く。
「至さんみたいに、ゲームしないし、ぐーたらじゃないし、メガネかけてて、インテリで、」
「何それ、左京さん?」
「左京さんより若い」
「それで?」
「スーパーマンみたいな人、」
「…じゃあ、俺勝てないじゃん」
「そうだよ」
「なかなかいい人なんだ」
「うん」
「ふーん…じゃあ、どうして泣くの?」
そんなの、聞かれたってわかんないよ。
「ふわふわの幸が作ったウェディングドレス着たいんじゃないの?」
「…」
「俺にタキシード着てって言ったじゃん。
左京さんか支配人に、バージンロード一緒に歩いてもらったらいいんじゃない?」
「っ、」
「俺、叶えてあげられるよ?
ゲームだって、芽李が言うならやめたっていいよ、舞台も一生続ける。
咲也と一緒に俺の扶養に…って、ダサいな」
「…」
「好きなんだよ、芽李のこと」