第21章 白妙
「ここにいたら、どうしても至さんとは離れられないでしょう?
至さんの恋人はゲームと…んー、春組と、カンパニーのみんなかな。あと、ピザとコーラ。ほら、入る隙ないじゃないですか」
「片想いって言うなら、あいつがあんなに真剣にお前を探したのはなぜだ?」
「私が咲也の姉だから、それだけです」
「本気で言ってるのか?」
「私はいつだって、ずーっと本気ですよ」
納得しないって顔。
こんなことじゃ、引いてくれないってわけか。
「芽李、」
名前で呼ばれるなんて、多分初めてだ。
だから、引けを取った。
「俺たちを遠ざけてまで、誤魔化さなきゃいけないくらい、大きなことに巻き込まれてるんじゃないのか?」
「っ、」
「…図星か。
七尾の件があった時、秋組の時の嫌がらせ、お前が異常に怖がっているように見えた。
ゴット座が仕組んでいたことを知って、お前は偉く安堵しているように見えた」
「…どこまでわかってるんですか」
「いや、それ以外"わからない"。だから聞いてるんだ。
お前のことを知るために、今回も裏で手を回したんだがな。
関係があると思って、お前の弟のことを調べている時出てきた情報も洗い直したかったんだが、今は手が出せなくなっている」
少しだけ安心する。
私のことに巻き込まなくてよかったって、ホッとしている。
千景さんが動いてくれたんだろうか…。
「雪白にお前のことをかるく聞いてな、今だと思ってな」
「それ、本人に言ってよかったんですか」
「お前はわかりやすいからな。裏でコソコソ調べるより、聞いちまったほうが、早い」
「な」
「そうじゃなくても、俺みたいな仕事してるとな、だいたいわかるんだよ。
人の、嘘も誤魔化しも、動揺もなんとなくな」
「だから、カマをかけた?」
「そうだな」
「…なら、わかりましたか?」
「お前の言葉に嘘があるってことはな」
「…」
グイッとメガネをあげる左京さん。
「賭けをしようかじゃねぇか」
ヤクザと賭け事はちょっと…なんていったら、どうなるかわかったもんじゃないな。
「お前と、俺たちで。
期間は、お前が冬が終わるまでって言うからな、それまでだ」
「俺たち?」
「お前を必要だって思ってるのは俺だけじゃないからな。
これは、このカンパニーの総意だ」