第21章 白妙
「ばかやろう!!!どれだけ心配かけさせればいいんだ!!」
ポカーンとする私に、ドタバタと足音が聞こえる。
「左京さん?!ダメです!」
襟首からパッと手が離れたのは、臣君が左京さんを押さえ込んだお陰だ。
ケホッと一つ咳き込んだあと、そっと背中をさすってくれたのは綴くん。
「大丈夫ですか、芽李さん」
「あ、…はい」
何が何だかわからないと思っていると、視界でピンクの髪が揺れる。
「姉ちゃん」
「さく」
「オレ、ちょっと肝が冷えたよ」
綴くんの隣に腰を下ろした咲。
「至さんも、すごく心配してたんだよ」
「あの、ごめん、話が読めないと、いいますか」
「あぁ"?」
ヤクザの睨みは怖いって。
「低体温症、危なかったんだよ、姉ちゃん」
咲がやけに落ち着いているのは、多分、多分だけどそれだけ怒ってる証拠だと思う。
「うす…」
「左京さんが怒るのも無理ないよ。すごく心配してたんだから」
「中学生の坊に送らせねぇっつうのは、いい判断だかな、せめて坊から連絡させて俺が行くのを待つとか出来ただろうが」
「お手を煩わせるのは、と、おもいまして」
尻すぼみになるのは許してほしい。
「結局こうやって手煩わせてんじゃねーか!!携帯も金も持たずに、馬鹿野郎!!」
「っ、」
「左京さん、そのくらいで」
「いいや、今日とばかりは言ってやる!いいか、ちゃんと聞けよ!大体お前はな、常日頃考えなしが過ぎるんだよ!」
左京さんのお説教は、それから1時間程度続き、臣くんは困ったように眉を下げ、咲も綴くんも黙ってそれを聞いていた。
…うん、でも今回は私が悪い。
「すみませんでした…」
「いいか、わかったな?!次なんかあったら絶対許さねぇぞ!!」
「はい」
「よし、じゃあお前ら下がれ」
「え?」
「はい。…いくぞ、咲也、綴」
「ちょ」
臣くんに連れられ部屋を出ていく2人を見送る。
ベッドサイドに椅子を持ってきて座った左京さん。
「…」
「…」
「おい」
「はい」
「雪白に聞いた。冬組を見届けたら、この寮を出るのか?」
「…」
「原因はなんだ?」
「…」
「ここ最近変なのは茅ヶ崎と何かあったからか?」
「…」
「それとも摂津か?ゴット座か??」
左京さんの目が私を捉える。