第21章 白妙
「またいつでもきてね、芽李さん」
来る時と同じように莇くんにひきづられて、外に出るともうあたりは真っ暗だった。
「送る」
志太君のおうちをでてすぐ、斜め前を歩こうとする莇くんを止める。
「え、いいよ。1人で帰れるよ」
「アンタ女だろ」
もう、イケメンがすぎると思う。
「女だけど、大人だし、究極、お迎え呼ぶよ」
「ならそこまで送る」
「志太君のお家泊まるなら、尚更、行き来させるの申し訳ないし、こんなに綺麗に魔法かけてもらったから大丈夫だよ」
「綺麗に魔法かけたから、心配だっつってんの。
それにさ、あんな顔して歩いてたっつーことは、その上着の相手となんかあったってことじゃねーの?」
「ん?」
「男物じゃん、上着。左京もたまにそういうの着てる。あと、いつもと違う匂いするから」
この子探偵か何かだろうか。
「優しいね、莇くん」
「は?」
「ありがとう。おかげで元気もバッチリ出たし、髪も巻いてもらっちゃって、ねぇ、またいつかさ、こうやって魔法かけてくれる?」
「それは、やるけど」
「ありがとう!じゃあ、本当に送ってもらわなくて大丈夫。
ちゃんとこの服の相手と仲直りして、大事な時にまた莇くんにこうやって魔法かけてほしいから、今日は私を信じて、莇くん」
「…」
中学生をこんな真っ暗な中歩かせるわけにはいかない。
莇くんに何かあったらの方が怖いし。
まあ、ほんとなんとかなるだろうし。
東さんに上着借りててある意味良かったかもしれない。
「じゃあね、莇くん。本当にありがとう。志太くんにもよろしくね。またね」
「ち、気をつけて帰れよ」
「うん」
妥協案として、左京さんにこっそり莇くんが連絡を入れてくれていたとはつゆと知らずに歩き出す。
大通り、どっちだ?
…そう、そして忘れていたのである。
土地勘もなく、携帯も持ってきていない事実を。
そしてもう一つ。
外は暗いが今は何時だ?
「あれ?やっぱりお願いすべきだったかも…」
戻ろうにも、土地勘がないのである。
所謂、迷子である。
迷子展開多いな私。
なんてメタなことを考える。
まぁ、道は繋がっているとおもいつつ、寒さが染みる。
はぁ、全く、メイクと慣れない髪に浮かれて、カッコつけてる場合じゃなかったわ。