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3月9日  【A3】

第21章 白妙


 「っ!」

 莇くんが息をのむ。

 え、やっぱりそんなに酷い顔してる?

 「ちょっと来い」

 強引に掴まれた腕、そしてひきづられるようにして、知らない路地をスイスイ進んでく。
 人がいないのは、そういう道をわざと進んでくれるおかげか?

 にしても、足は速いしけっこう歩いたしで割と疲れたんだが。
 汗はかかない程度にだいぶ体があったまった気がする。

 「あの」
 「ついた」
 「え?」
 「ダチの家。さっきまで遊んでたから」

 そっか?
 で?

 と、この状況に頭を悩ませる。

 その間にチャイムを押した莇くんがインターホン越しに、友達らしき子と話すのを聞いていた。

 「志太、」
 「なんだよ莇、忘れ物?」
 「ちげーよ。ちょっと場所貸して」
 「いいけど、今開ける」

 そのうちがちゃんとドアが開く。

 「…って、」
 「この人芽李さん。たまたま会った」
 「この人が!!どーも!俺、莇の親友の志太って言います!」
 「芽李です。よろしくお願いします」
 「邪魔する」

 ズカズカと遠慮なく、私を引き摺りつつリビングに向かうと、そのままそこに座らせる。

 「あの」
 「まぁ、ちょっと待ってろよ」

 莇くんの持っていたカバンからありえない量のコスメが出てくる。

 …ん?

 「そんな顔で外で歩くなよな。俺も練習になるし、ちょっとだけ付き合ってよ」
 「ん?」
 「莇はさー、メイクする人になりたいんだよ。
 その練習台になってっていうことだろ?っていうか、説明も無しにつれてきたのかよ」

 少し無邪気に笑って、お茶淹れてくると立ち上がった志太くん。
 急にお邪魔したのに加え、なんだか色々と申し訳ない。

 「志太くん、あの、ごめんね?急にその、お邪魔したのも、お家の方にご挨拶とか、」
 「大丈夫っす。莇の知り合いでしょ、それに無理やり連れてこられたんだろうし。強引なところあるもんな」
 「うるせー、」
 「でも、保護者もなしに未成年のお家にお邪魔するのはちょっと」
 「大丈夫っしょ、気になるなら莇のお姉さんっていう体でいきましょうよ、なんか面白いし」

 あっけからんと笑って、お茶を三つ出してくれた志太くん。
 驚く程大人びて見えるけど、莇くんと同じ歳らしい。

 最初はメイク落としに始まり、莇くんの手によって施されるメイク。
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