第21章 白妙
「どんな人なの?」
「あ、えっと……。
スーパーマンみたいな人です。…やさしくて、頭が良くて、几帳面っぽくて、至さんとは正反対で、…でも、どこか似てるんです」
「…ふふ、そっか」
「はい」
安心したように笑った東さんに釣られて笑う。
「そう思ったら、…失礼ですよね。
泣くほどの、気持ち…早く忘れないと。
冬組見届けながら、ちゃんと昇華していかないとですね」
「微力ながら、力になるよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、そろそろもどろうか。みんなのところに」
「待ってください、東さん、私のせいで服濡れちゃってますし」
「大丈夫、このくらい」
「あ、じゃあ」
着ていた少し大きめのパーカーをぬぎ、押し付ける。
「ん?」
「せめてものお詫びというか、これ、大きいサイズなので東さんも着れると思います。
みんなに驚かれちゃうかもしれないし、誤魔化すためにもきてください。
私、こんな顔じゃ戻れないし、一度寮に戻ります」
「………わかったよ、ありがたく貸してもらうね。
でも芽李、今度は君が外に出るには薄着で風邪をひいてしまうよ。だから、少し待ってて」
そう前置きをした後、どこかに行ってしまった雪白さんは5分もしないで戻ってくると、ふわっと私の肩にコートをかけた。
「お礼に僕のコートを貸してあげる。ついでにみんなには、うまく言っててあげるね?」
エスコートするように、そっと私を連れ出した東さんに見送られ劇場を出たのはいいが、冷静になって思うとこの上着があるなら、私が貸す必要なかったのでは?なんて考えが浮かぶ。
まぁ、いっか。
もう外に出てしまったし。
ポケットには鍵だけ、私としたことが荷物、というか携帯まで劇場に置いてきてしまった。
でも寒いし、今更戻るのめんどくさいし…。
よっぽどのことがあれば、寮に電話来るだろうし。
うん、大丈夫、大丈夫。
とりあえずこの、泣き腫らした顔をどうにかしないと。
隠すように俯いて歩く。
寮までの道が長く感じられるのは、寒さのせいだろうか。
「芽李さん」
トンッと肩が叩かれた。
「莇くん」
「ちわっ。って、何してんだよ」
「いや、ちょっと…顔を隠してる」
「なんで」
「不手際がありまして」
覗き込まれ、目が合う。