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3月9日  【A3】

第5章 小彼岸


 「ついにですよ、芽李さん」

 支配人の他に、女性が1人と咲の他に2人の男の子。
 結構若めだけど、旗揚げ公演になるなら丁度いいかもしれない。

 この寮で、かつて咲いていたような満開な笑顔がまた見れるかもしれない。

 ここからがスタートだ。

 だってそうでしょう?

 今日がもし失敗していたら、新しい3人だっていないはずで、左京さんだって待っててくれないはずで。

 そう思ったら、ホッとしたような、これから頑張って行かなきゃ行けないと自覚したような、変な感じだ。

 感極まるというか…。

 思わずボロッボロ大人げなく泣いてしまったのは許してほしい。

 心のどこかで思ってた。もしかしたら、今日終わってしまうかもしれないって。
 咲や支配人を信じてなかったわけじゃないけど、どうしても不安だった。

 「この寮の寮母といいますか、その、えっと、…っ、雑用係しておりまして、…っ、
 それでっえっと、」

 …咲が心配そうにこっちを見てるのが、視界の先に入って。
 だから、精一杯の笑顔を作る。

 「…酒井芽李と申します!」

 バッと頭を下げる。
 
 「監督をすることになりました、立花いづみです。
 こちらこそ、よろしくね。芽李ちゃん…でいいかな?」

 「…っ、はい!!」

 ぶんぶんと握手させてもらうと、すっごく痛い視線を感じる。

 「俺の監督に触らないで」
 「…え?ごめ?」

 握手していた手をチョップでベリベリっ、ストーンと離される。

 急展開に驚いて完全に涙も引っ込む。

 「ん?」

 ポンと肩を叩かれ後ろを振り向くと申し訳なさそうな顔で話しかけてくるイケメン。

 「俺は、皆木綴っス。作家志望で…あっちは碓氷真澄。」
 「作家さん!?」
 「いや、えっといつか書けたらなって。」
 「え?!凄いね!
 支配人の"ロミオの学園天国"もなかなか奇才だなぁとはおもったんだけどね?!
 よかったぁ、本当によかった!ありがとうございます!!これで脚本と監督の心配もしなくて済むんだーっ、よかったぁ……」

 ホッと胸を撫で下ろす。

 流石にあれでオールシーズンは無理と思ってたもんね、素人目に見ても…
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