第21章 白妙
学生組たちが2人に絡んでいく様子を見ながら、微笑ましく思う。
冬組にこの2人が入ってくれたなら、もう安心だ。
なんていい感じで、和気藹々としてきたところを、浮かれっぱなしじゃなく緊めるよう口を開いたのはさすがご意見番というべきか、やはり左京さんだった。
「…で、2人集まったわけだが、残り3人はどうするんだ」
ふと頭に浮かんだのは、丞さんのこと。
「え、えっと…もう少し待ってみましょう!」
いづみちゃんが提案するのをききながら、未だ来ないその人に少し残念に思う。
そんな時、
「なぁ、芽李さん」
くいっと私の袖をつかんだのは万里くん。
さっきまで月岡さんにちょっかい出してたと思ったのに。
「どうしたの?」
「あー、いや。大したことないんだけどな、オーディション始まる前に言ってたよな、あのゴット座の奴のこと」
「…あぁ、丞さんのこと?」
「そうそう、心当たりでもあんのかなって」
「んー、心当たりっていうか…。
ルチアーノとランスキーがベンジャミン庇って、レニさん達にメンチきった日あったじゃん」
「ん?…あぁ、まぁどっちかっつーと、俺と兵頭と太一だけどな」
呆れたように言う万里くんは置いといて、続ける。
「あの日、丞さんだけが知らされてなかったみたいなんだよね。つまりは、ゴット座と仲違いしてたから、舞台見るように誘ったって話。よかったらって」
「は?」
「いや、ぎゅっんっ、て眉寄せてるじゃん。
…まぁ、でも、そんな顔するのはわかる」
太一くんのことがあったし、ゴット座って名前聞くだけで少し嫌な気分になってしまうよな。
「トップに居続けるって、相当なプレッシャーもあるんだと思うんだ。
だからって、何しても許されるわけじゃないけど、…それでも、その中でも丞さんは純粋にお芝居が好きだったんだなって、舞台見てるところ見てたら思ったんだよね」
「…」
「それにさ、本気になった万里くんの、秋組みんなの真剣なお芝居みたんだよ?
生で、ルチアーノ、ランスキー、ベンジャミン、デューイ、カポネを見たんだよ?
あの迫力のあるアクションをみたんだよ?!これはもう、グッと来ない方が無理じゃん。
…お芝居好きそうだったからこそ、あのフライヤーの裏見て、今日のオーディション来てくれるかと思ったんだけどな」