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3月9日  【A3】

第21章 白妙


 「いよいよ最後の冬組が決まるわけか」

 左京さんの言葉にワクワクが止まらない。

 「感慨深いですね」
 「うん、私、久しぶりのオーディションで、もうワクワクがとまらないよ!!」
 「俺らの時は定員ギリだったけど、いつもあんなもんなのか?」
 「うん。スカウト枠で2人くらい声をかける以外は、いつもニ、三人しか来ないから」
 「みんな人生損してるよ!こんなに素敵な人たちしかいない劇団なのにさ!」
 「はいはい。サンキューな」

 全くどっちが年上かわからないと言うように、私の頭を肘置きにしやがる、ヤンキーこと万里君は今ではもう立派な秋組リーダーだ。

 「ところで、今回のスカウト枠は?」
 「うーん、それが、思いつく人がいなくて。人数が集まるか、ちょっと不安なんだけど…」
 「丞さんとか来ないかな?」

 ぼそっと呟く。

 「え?」

 反応したのは、近くにいた万里くんだけ。

 「なんとなくだけど」

 誤魔化すように言って、みんなの話に耳を傾ける。

 「春組からの公演で固定ファンもついたことだし、知名度もアップしてるから大丈夫じゃないか?」
 「そうかな?」
 「オーディション告知のチラシもはけたし、大丈夫ッスよ!」
 「そうだよね!」
 「私も個人的に一枚渡したし、1人は来ると」

 思うと言いかけた時、

 「失礼します」

 聞き馴染みのある、優しい声が聞こえた。

 だけど、劇場だからかすこし照れくさい。
 例えるなら、参観日にお母さんが来たみたいな感覚。
 …合ってるかわからないけど。

 「失礼するよ」

 その後にもう1人、入ってきたのはいつか会った綺麗な人。

 「あ…」
 「来た………!」

 感嘆として言ういづみちゃんの脇で、ぶっきらぼうに十座くんが出迎える。

 「おい、オーディション希望者か?」
 「ーーう、うん」

 その時、十座くんに詰め寄られ泳いでた目が私を捉えた。そのあと、優しく微笑まれる。
 しんしんと降る、優しい雪のような笑い方。

 「テメェが受付にいたら、せっかくの希望者が帰っちまうだろ」
 「てめぇに言われたくねぇ」
 「2人とも下がってろ。俺が出る」
 「いや、左京にぃも下がっててほしいッス!」
 「それで、ボクたちはどうすればいいのかな?」

 それこそ雪のように真っ白く、綺麗な長い髪を揺らしたその人が言う。
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