第21章 白妙
「いよいよ最後の冬組が決まるわけか」
左京さんの言葉にワクワクが止まらない。
「感慨深いですね」
「うん、私、久しぶりのオーディションで、もうワクワクがとまらないよ!!」
「俺らの時は定員ギリだったけど、いつもあんなもんなのか?」
「うん。スカウト枠で2人くらい声をかける以外は、いつもニ、三人しか来ないから」
「みんな人生損してるよ!こんなに素敵な人たちしかいない劇団なのにさ!」
「はいはい。サンキューな」
全くどっちが年上かわからないと言うように、私の頭を肘置きにしやがる、ヤンキーこと万里君は今ではもう立派な秋組リーダーだ。
「ところで、今回のスカウト枠は?」
「うーん、それが、思いつく人がいなくて。人数が集まるか、ちょっと不安なんだけど…」
「丞さんとか来ないかな?」
ぼそっと呟く。
「え?」
反応したのは、近くにいた万里くんだけ。
「なんとなくだけど」
誤魔化すように言って、みんなの話に耳を傾ける。
「春組からの公演で固定ファンもついたことだし、知名度もアップしてるから大丈夫じゃないか?」
「そうかな?」
「オーディション告知のチラシもはけたし、大丈夫ッスよ!」
「そうだよね!」
「私も個人的に一枚渡したし、1人は来ると」
思うと言いかけた時、
「失礼します」
聞き馴染みのある、優しい声が聞こえた。
だけど、劇場だからかすこし照れくさい。
例えるなら、参観日にお母さんが来たみたいな感覚。
…合ってるかわからないけど。
「失礼するよ」
その後にもう1人、入ってきたのはいつか会った綺麗な人。
「あ…」
「来た………!」
感嘆として言ういづみちゃんの脇で、ぶっきらぼうに十座くんが出迎える。
「おい、オーディション希望者か?」
「ーーう、うん」
その時、十座くんに詰め寄られ泳いでた目が私を捉えた。そのあと、優しく微笑まれる。
しんしんと降る、優しい雪のような笑い方。
「テメェが受付にいたら、せっかくの希望者が帰っちまうだろ」
「てめぇに言われたくねぇ」
「2人とも下がってろ。俺が出る」
「いや、左京にぃも下がっててほしいッス!」
「それで、ボクたちはどうすればいいのかな?」
それこそ雪のように真っ白く、綺麗な長い髪を揺らしたその人が言う。