第20章 白雪
忙しい朝に、ぐるぐると同じようなことをこれ以上考えるわけにはいかないと、一旦それについては思考を止める。
よく二日酔いにならなかったなって、それだけを脳天気に思って、配膳を手伝ってくれた咲に今一度声をかけた。
「咲、お弁当ナポリタン入れたからね」
「ありがとう、ねぇちゃん!」
「うんっ」
ホワホワっと笑った咲が、やっぱり1番可愛い。
それだけでいいじゃないか。
それぞれが食卓につき、朝ごはんを食べ始めた頃、まだ起きてない面々を起こすため、談話室を出る。
まだ起きてないのは、真澄くんと、至さんと、万里くん。
あと支配人。
支配人はいいや、いつも昼頃まで寝てるし。
なんて思いながら歩いていると万里くんが向こうから歩いてくるのが見えた。
「おはよ、万里くん」
「おはよう、芽李さん。それから、おめでと」
「え?なんのこと」
「至さんに言ったんだろ?」
ピタッと全身が強張る。
なんで知ってるのって、当たり前か。
至さんと万里くんは仲良いんだし、昨日あの後…私が寮を出た後、ゲームか何かをしてる時に言ったんだ。
…多分。
「…芽李さん?」
「あ、うん。まぁね」
「どうしたんだよ」
「ううん」
おめでとうって、言われるようなことは何にもなかった。
なんのおめでとう?
仲直りおめでとう?
うまく行かなかったけど、気持ち伝えられてよかったな?ってこと?
「あのさ、万里くん」
「ん?」
おめでとうについては言及しない。
その代わりにさ。
「お願いがあるんだけど、いいかな」
「なんすか?」
「至さん、私の部屋で寝てるんだ。起こしてきてもらえないかな?」
「はっ?!」
ホンワリと耳が赤くなったのは気のせいか?
「今日一の声出たね」
「うるせーよ、」
「お願い、万里くんにしか頼めない。お願い」
「ったく、仕方ねぇな」
頭をぐしゃぐしゃとかいたあと、私の部屋に向かった万里くんを見送って、真澄くんを起こしに向かった。
トントン
ノックをしたけどやはり返事のない102号室。
「入るよー?」
朝だと言うのにカーテンが閉められている。
「真澄くん?」
変に思ってベットに近づくと両サイドから寝息が二つ聞こえた。
3人だけじゃなかったみたいだ。