第19章 上匂
「芽李さんは、気持ち伝えたのに。至さん、アンタも男見せたらどーですか?」
「う…」
万里に説教されるなんて、ほんとどうしようもないな。
こんな格好じゃ、カッコつかないし。
と、前髪を解いてくしゃくしゃっと手櫛で治す。
「本領発揮っすね。で、芽李さん探さないとか」
「は?部屋にいるっていってたけど」
スカジャンをぬいで、適当に着替える。
こんな夜にまともな服にプライベートで着替えるの、だいぶ久々なんだが。
「いや、寮内見当たらないんですよね」
と言ったところで、タイミングよく携帯が鳴る。
「至さん電話」
「万里でてー」
「いいっすけど、芽李さんってかいてありますよ?」
言われた瞬間に、やっぱり俺が出るとひったくり、万里に呆れ顔されながら通話ボタンを押した。
「芽李!ごめん、俺の」
言いかけた時、電話の向こうでクスっと、中性的な声がした。
「あの、どちら様ですか?」
『キミが至くん?』
中性的?いや、男性だ、どう考えても。
まさか、許嫁?芽李は…、
『驚かせてごめんね、僕は彼女の古い友人でね。
呼び出したのは良いんだけれど、彼女お酒を呑んだら眠ってしまってね。お迎えお願いできないかな?』
「どうして、あなたが芽李の携帯から俺に電話を?」
『それは秘密。
僕が彼女に手を出す前に、早く来てくれないかな?
…そうだ、30分以内に来てくれたら彼女に手は出さないでおいてあげる。
もし間に合なかったら…ふふふ、彼女、モタナイカモね?』
「っ、」
『場所は駅前のBARだよ。お昼はカフェもやってるんだ。目印は大きな桜の木、待ってるね』
「は?!」
電話が切れる。
「駅前のバーってどこだよ?!」
「芽李さん、なんて?」
「万里、駅前のカフェで夜にBARになるところ知らないか?」
「あ?そんなのいくらでもあるだろ。
つーか、どこの駅?」
「知らないけど、芽李が危ないかもしれない。大きな桜の木があるって」
「あぁ、それなら」
「悪いけど万里、それ住所送って!俺走ってくから、悪いけど、水も用意しといて!」
携帯と財布を持って、急いで寮を出る。
茅ヶ崎走るなとか左京さんか誰か言ってたけど、知るか。