第19章 上匂
「ひどい顔、なんかあったの?」
「いや、なんか分かんない。そんなにひどい顔してる?」
「うん」
ペタペタと顔を触る。
「疲れたのかな、」
あんな表情を、向けられるなんて思ってなかったから。
「全力で泣いてたもんね。良かったよね、秋組」
「うん、すごくよかった」
いつもなら興奮して話すような内容も、心の中でブレーキがかかったみたいで、上手いこと身が入らない。
「ねぇちゃん?」
「なぁに?咲」
「ううん、なんでもない」
変な咲。
「今日、打ち上げは秋組の好きなものつくるんだよね?」
「うん、あと、カレー。いづみちゃんも頑張ったし」
「監督と、真澄君が喜びそうだね」
「たしかに。あっ、そうだ…至さん打ち上げ参加しないって」
「そうなんだ?」
「まぁ、今回は秋組がメインだからね」
言いながら、ひっかかる。
「そっか。あっ!そうだ、夕飯作るのオレもお手伝いするね!」
「ありがとう咲。助かるよ」
咲のにっこり笑った顔に、すっかりと絆される。
だけど、なんとなく、刺さった棘が抜けない。
「わぁ、すげぇな」
感嘆のため息をついたのは、さっきひょっこりと戻ってきた万里君。
宣言の通り、やっぱり至さんは居ない。
「みんなで作ったからね。秋組のみんな、本当にお疲れ様でした」
監督がいい、万里君かと思いきや左京さんが乾杯の音頭をとるみたいだ。
まずは秋組について、それから経費削減と冬組について、これからについて、うんたらかんたらで、と長くなったところで、遮ってやっぱり万里くんが乾杯と言った。
左京さんにはぐちぐち言われてたけど、それもそれで秋組らしい。
十座くんはずっとデザート系をたべていて、それでいてよくあの体型を保っているものだと感心する。
その隣でニコニコしている椋くんが小動物みたいで可愛い。
リーダーズの3人はまとまって何かを話していて、真澄くんは監督と話す左京さんに牙を巻いていて、それを宥める綴君に絡むシトロン君とカズ君。
バイキングする幸くんにくっつく太一くん。
亀吉と迫田さんと支配人は3人で泣きながら語ってる。
三角くんは臣くんに三角おにぎりをねだっている。