第19章 上匂
「ボクの頭がスカスカの高野豆腐でレンコンだから」
「味がよく染み込みそうだな」
「俺は、椋の従兄弟だ」
「そーなん?なんで秘密にしてたんだよ?」
「俺なんかと身内だってわかったら、こいつの評判を下げると思って言わなかった」
…な、なにそれ。
「思考回路が似てる。さすが身内」
「十ちゃんは自慢のいとこだよ!舞台の十ちゃん、すごくかっこよかった!」
それもそれで尊いんですけど。
尊さの玉手箱なんですけど。
MANKAIカンパニー尊さで溢れて語彙力もう尽きたんですけど。
「っ、」
「すっかり十ちゃん呼びだね〜」
「あっ」
「好きに呼べばいい」
だめだ、もう涙が止まらん。
「で、さっきから号泣じゃん。どうしたの、芽李さん」
隣にいた綴くんは気づいたらもう居なくて、代わりにひょっこり幸くんがいた。
そしたら、もうなんか夏組の千秋楽が見られなかったことだけがすごく心残りになってしまって、こんなに尊いのを見逃したのかと、そしたら余計泣けた。
「うぅっ尊くて」
「は?」
そのうち十座くんの携帯が鳴って、十座くんの弟のくもんくんからで、万里くんがノリノリで喧嘩強いのかとふったりしていて、ランスキーの兄感はそこから来てるのかとおもったら、止まるもんも止まらない。
椋君と2人で出て行った十座君と、入れ替わりで入ってきたのは至さんとシトロン君。
日本語めちゃくちゃになっちゃう気持ち、今ならわかる。
え?それとこれとは別だって?
「アニキー!感動しやした!!」
ばぁあんっと次に入ってきたのは迫田さん。
わかる、わかるよ、今から2人で語りません?
と言おうとした時ぐいっと首に腕が回った。
少し汗の匂いと、香水が混じる。
「至さんとゲームやっから、芽李さんも来るだろ」
「ひょえっ」
大雑把すぎるぜ、ルチアーノ。
ルチアーノすぎてもう、息が止まるよそろそろ。
毎回のことながら、皆木先生の本人と役との解釈の一致がすぎる。
そして、そんなルチアーノin万里君には、一回はっきりと大きな声でつたえたい。
…まず、涙でぐしゃぐしゃだから顔洗いたい。
「ぎぶ」
「却下」
万里くんのとなりで、携帯をいじる至さんはやっぱり何も言わない。
いいのかな、一緒に行っても…。