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3月9日  【A3】

第19章 上匂


 『迷惑両も払う』
 『はぁ?金で解決しようなんざ

 金?金を出すって言ったのか?
 あのドケチで1ドル出すのに一時間考える守銭奴ランスキーが?』
 『それくらいのことをしたと思っている』
 『正気か?』
 『あぁ』
 『信じられん。あのランスキーが金を出すのか?

 …くっ、あはははは!ランスキーが金!あははは!腹が痛ぇ!笑い死にしちまう!』
 『何がおかしい』
 『あははは!歯食いしばれ』
 『…は?

 …ぐはっ』
 『仕方ねぇ。これで許してやる』

 これが2人の本気。
 すごい、ほんとに、凄い。

 『これからどうする?』
 『俺は弟を食わせてやらなきゃいけない』
 『俺もおかげさまで無職だ。商売でもするか?2人で。用心棒とか』
 『それがスパイとかな』
 『懲りねぇな。まぁ、なんでもいいや。何でも屋でいいじゃねぇか』
 『大雑把すぎる。でも、まぁいいか』

 秋の、爽やかな幕引き。
 カーテンコールで響く大きな拍手。

 「芽李ちゃん、行こっか」

 いづみちゃんに言われたけど、もう涙やら何やらで視界がごちゃごちゃしている。

 大皆木大先生大に、大感謝したいし大。

 と、日本語がバグるくらいよかった。
 乏しい語彙力に、咲を褒める時と同じくらい今後悔している。

 もうこの場所動きたくないんだが。
 ずっと浸っていたいんだが。

 秋強くね?

 秒速で、そんなことを考えていることを、多分みんな知らないだろう。

 「おーい、芽李さん?監督先行っちゃいましたし、咲也も当番で先に行ってるし、後俺たちだけですから行きましょう?」

 この声は、大皆木大先生大だ。

 「だぃい」
 「なんですか、だぃいって」
 「今回もっ、今回も神作で、もう、もうっ」
 「ありがとうございます、感極まってるんですね?ほら、凄いことなってますから、」

 ぐいっと差し出されたハンカチ。

 「そ、そんな、皆木先生、ファンサがすぎるぞ?」
 「はいはい。まったく、口に出てますよ」

 グイグイとひきづられるように、秋組の控え室に行けば、秋組の他に夏組のみんなも労いに来ていた。

 「十ちゃん!すごくかっこよかったよ!」
 「十ちゃん…?」
 「いつの間にか仲良し〜?」
 「椋…」
 「ご、ごめん、十ちゃん、秘密だったのに!」

 
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