第19章 上匂
「芽李ちゃん、始まるよ。どこ行ってたの?」
「うん、ちょっと…」
「…?そっか?」
他の組の大体のメンバーが、それぞれの作業を終えて、後は秋組のみんなが頑張るだけだ。
頑張って、みんな。
『話って何ですか、ボス』
『ルチアーノ、ランスキー、お前ら2人でコンビ組め』
『はぁ!?』
『嫌です』
ルチアーノに、ランスキーそれから、カポネ3人のやり取りから始まった"なんて素敵にピカレスク"。
色々あったこの、秋という季節がもうすぐ終わってしまう。
そう感慨深く思いながら観ていたのに、実際はそんなのに浸る、そんな暇はなくいつのまにか引き込まれてしまった。
とくに、ベンジャミンが出てきてからはダメだった。
『兄ちゃんの友達?僕、ベンジャミン。よろしくね!』
なんかもう、弟って存在はどんな時でも愛おしいんだと思わずにはいられない。
あと、ランスキーがもうお兄ちゃんで、語彙力なくすし、尊い!!
『兄ちゃん、仕事で無理してない?』
『どうだろうな。よく働いてるみてぇだけど』
『兄ちゃんに聞いても全然教えてくれないんだ。僕の手術のために無理してるんじゃないかな』
『手術?』
『僕、今度大きな手術をするんだ。成功するかわからないけど、成功したら普通に生活することができるようになるって』
『良かったじゃねぇか』
『でも、すごくお金がかかるらしいんだ。兄ちゃんにその話すると、怒られるんだけど』
『金か…心配すんな。ランスキーはがっぽり貯め込んでるからよ。お前は手術頑張ることだけ考えろ』
『うん、そっか。そうだよね!』
やっぱり、太一くんのベンジャミン、素敵だ。
千秋楽がいちばんいい、演技だった。
万里くんと十座くんの掛け合いも、場を締める左京さんも、普段とは真逆な臣くんも、みんながそれぞれの演技に引っ張られて、相乗効果でよくなってる。
舞台なんて素人目にしかわからないけど、それでも5人の団結力が上がっているのも、それぞれの成長も舞台を重ねるごとによくなってるのも、初日から観ているとすごくよくわかる。
みんながお芝居に直向きに向き合ってたのも、近くで見てたからよくわかる。
MANKAIカンパニーが、みんなが、やっぱり大好きだ。
叫びたくなるほど、胸が熱くなった。