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3月9日  【A3】

第19章 上匂


 「芽李ちゃん、始まるよ。どこ行ってたの?」
 「うん、ちょっと…」
 「…?そっか?」

 他の組の大体のメンバーが、それぞれの作業を終えて、後は秋組のみんなが頑張るだけだ。

 頑張って、みんな。

 『話って何ですか、ボス』
 『ルチアーノ、ランスキー、お前ら2人でコンビ組め』
 『はぁ!?』
 『嫌です』

 ルチアーノに、ランスキーそれから、カポネ3人のやり取りから始まった"なんて素敵にピカレスク"。

 色々あったこの、秋という季節がもうすぐ終わってしまう。

 そう感慨深く思いながら観ていたのに、実際はそんなのに浸る、そんな暇はなくいつのまにか引き込まれてしまった。

 とくに、ベンジャミンが出てきてからはダメだった。

 『兄ちゃんの友達?僕、ベンジャミン。よろしくね!』

 なんかもう、弟って存在はどんな時でも愛おしいんだと思わずにはいられない。
 あと、ランスキーがもうお兄ちゃんで、語彙力なくすし、尊い!!

 『兄ちゃん、仕事で無理してない?』
 『どうだろうな。よく働いてるみてぇだけど』
 『兄ちゃんに聞いても全然教えてくれないんだ。僕の手術のために無理してるんじゃないかな』
 『手術?』
 『僕、今度大きな手術をするんだ。成功するかわからないけど、成功したら普通に生活することができるようになるって』
 『良かったじゃねぇか』
 『でも、すごくお金がかかるらしいんだ。兄ちゃんにその話すると、怒られるんだけど』
 『金か…心配すんな。ランスキーはがっぽり貯め込んでるからよ。お前は手術頑張ることだけ考えろ』
 『うん、そっか。そうだよね!』

 やっぱり、太一くんのベンジャミン、素敵だ。
 千秋楽がいちばんいい、演技だった。

 万里くんと十座くんの掛け合いも、場を締める左京さんも、普段とは真逆な臣くんも、みんながそれぞれの演技に引っ張られて、相乗効果でよくなってる。

 舞台なんて素人目にしかわからないけど、それでも5人の団結力が上がっているのも、それぞれの成長も舞台を重ねるごとによくなってるのも、初日から観ているとすごくよくわかる。
 みんながお芝居に直向きに向き合ってたのも、近くで見てたからよくわかる。

 MANKAIカンパニーが、みんなが、やっぱり大好きだ。
 叫びたくなるほど、胸が熱くなった。
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