第19章 上匂
「知らなかったとはいえ、許されることじゃないだろ」
「…確かに、そうですけど、でも丞さんが背負うことじゃないです。
舞台を壊すような人と、一緒にやっていけないって、それって純粋にお芝居が好きだからですよね」
「…」
「太一くんのお芝居、見てあげてくれませんか?」
「七尾の?」
「はい。MANKAIカンパニーは、確かに、GOD座に比べたらできたばかりの素人ばかりの劇団って思われるかもしれませんけど、でも熱い気持ちを持ってやっているのには、変わりありません。
それ以上の熱量で、一人一人が演じてるんです。太一君も、その1人です」
少しだけ考えるような丞さんの姿を見て、言葉を続ける。
「丞さんに、見てほしいんです。
秋組のアクションは凄く迫力があるし、綴君の描くお話しはとっても素敵だし、幸君の衣装はその舞台を引き立てるんです。
役者の背中を押すような、凄い衣装なんです!」
「ふっ、」
急に吹き出した彼に、驚く。
「あ、え、」
「…わかった。そこまで言われたら、観させてもらう」
「っ!!ありがとうございます!座席までご案内致します!」
「立ち見席でいい、悪いがあの人たちとは今は観たくないんだ」
その気持ちにうなづく。
ーーーー
ーー
丞さんを場内まで送り届けたあと、またばったりとGOD座の2人に会った。
タイミングがいいんだか、悪いんだか。
「やぁ」
「…どうも」
「…」
「お二人も、ご観劇していただけるんですよね?」
「そのつもりだが?」
「そうですか、…なら、よく観ててください。
あなた方が引き裂いた衣装、壊そうとした舞台、…なにより、捨てゴマって言った、太一くんのお芝居。
レニさんのこと、尊敬してました。晴翔のことも信じていたかった」
「…」
「芽李…」
「こんな小娘に何言われたって響かないかもしれませんけど、何をしてきたってMANKAIカンパニーは負けません。
秋組のみんながきっとあなた達をみかえしてくれる。
…晴翔」
「なに」
「こんな時じゃなかったら、お芝居が好きな晴翔に、1番の友達に、こうやって大好きなMANKAIカンパニーのお芝居、純粋に楽しんでもらえたら良かったんだけど…
長々と私ばかり話してしまいすみません」
その時丁度劇場アナウンスが鳴った。