第19章 上匂
「善処します」
「ふっ、」
なんてやりとりをしているところに、他の団員たちも続々と起きてきた。
朝の挨拶が飛び交う中で、本当に賑やかになってきたものだと思う。
「芽李さん、朝食ありがとうございます」
「臣くんこそ、お手伝いありがとうございます」
いえいえ、なんてやりとりも最近の茶番である。
今日はパンだとか、ご飯だとか、水派とかお茶派とか、そんな具合でそれぞれにさばいていく。
寮母の朝は忙しい。
…けど。
「あれ?至さんと万里くん、今日まだ来てないよね」
「ですね。俺、起こしてきますよ」
「あ、私行く。臣くん、もう食べて出なきゃ間に合わない時間でしょう?」
「すみません。じゃあ、お願いします」
「はーい」
誰が来てない、とか、来てるとかくらいの把握は容易い。
談話室をでたところで、寝癖一つない髪を弄る万里くんとぶつかる。
「あれ?万里くん、おはよう」
「あぁ、はよ」
「至さんは?」
「あぁ?いつも一緒なわけじゃねぇよ」
それもそうか思いながら、朝食が出来てあるのを伝える。
「…万里くん、昨日はありがとう。
万里くんのおかげで、左京さんに顔色いいって褒められた」
「なんだそれ、良かったな」
「うん。じゃあ、学校遅れないようにね」
「あぁ、咲也達と行くから気をつける」
「うん、咲のことお願いします」
「ん」
通り過ぎ状、ぽんぽんと頭を2回ほど撫でられる。
あぁいうこと、サラッとできるからモテるんだろうなぁなんて思った。
万里くんと別れて、103号室前。
ノックをしても返事はなく、まだ寝てるのか、有給を取ってるのかと思いながら、入りますよーと声をかけてドアノブを捻る。
シーンとしてる。
「至さん?」
おかしいな、今日は姿見てないと思ったんだけどな。
「いたるさーん?」
洗面所か、トイレにでもいってるのか…。
「何してるの、芽李」
隣の部屋から聞こえてきた声に振り返る。
「あ、真澄くん」
スクールバックを持っているところを見ると、もうすぐ出るらしい。
「学校いまから行くの?気をつけてね」
「うん…って、そうじゃない。至、もう行ったけど」
「え、…あ、そう。ありがとう。ご飯食べに起きてなかったから」