第19章 上匂
「…そうか」
「私、MANKAIカンパニーが好きです。
大好きです、心から。左京さんのおかげで、咲だけじゃない、宝物が増えたって思ってます。
お花屋さんのお仕事も、充実してるし、感謝しています」
「…」
「左京さんは大人だから、私に言われても仕方ないかもしれないですけど、役者さんとしての左京さんのファン同率で一位だと思ってますから。迫田さんや、いづみちゃんや、秋組のみんなに負けないくらい、思ってますから」
つらつらと出てきた言葉は、左京さんの表明に対しての返事のつもりだったのかもしれない。
「だって、支配人の次に私がこのカンパニーの中でいったら、左京さんとは長いんだから、…だから、この先どんなことがあっても左京さんの味方です」
どうしても、左京さんの話を聞いた今、左京さんに聞いて欲しくなった。
「カンパニーのみんなの、味方です」
少しだけ熱くなってしまう。
「佐久間?」
眉を顰めた左京さんに、慌てて何でもないですと、首を振る。
「いづみちゃんが発破をかけるほど、左京さんが身を引いていたならって思って。
追い討ちかけてみただけです。
左京さんの千秋楽のカポネ、楽しみにしてます」
「追い討ちって、お前なぁ。
千秋楽までにまだ何公演もある。先じゃねぇか」
「あっという間ですよ。みんなのお芝居、1番近くでずっと見てたい」
「観られるだろ、」
「まだまだ足りない。カポネも、ルチアーノも、デューイも、ランスキーも、ベンジャミンも、秋組が演じるたびに好きになってく。
お芝居のこと何もわからなかったのに、綴くんの本で一層輝いてくみんなをずっと観ていたい思うの、自分でもおかしくて笑っちゃうくらい、ここにいることが幸せ」
「…」
「だから、左京さん。ずっと、永遠にこれから先も、このカンパニーで、役者さん続けてください。
私が無責任に応援してるので」
「本当に、勝手な奴だな」
優しく笑った瞳の奥に、私が映ってた。
「じゃあお前も、約束しろ」
「約束?」
「俺たちが咲くところを、特等席で見せてやるから。
…花を綺麗に咲かせるなら、太陽や水だけじゃねぇ。栄養剤が必要な時だって、あるだろ」
左京さんはずるい、平気でサラッとそんなこと言うんだから。