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3月9日  【A3】

第18章 松月


 お風呂上がりなのか少し髪は湿って、肩にかけたタオルで髪を乾かしている。

 「臣、次風呂お前」
 「あぁ、今行く」
 「臣君、あとはヤンキーに手伝ってもらうからいいよ。お風呂入っておいで」
 「だから、誰がヤンキーだって」
 「じゃあ、あとはお願いします。…万里、ほどほどにな?」

 心配しなくても、喧嘩はしないんだけど。

 私と万里くんのやりとりを微笑ましくみながら、お風呂へと向かった臣君。

 そんな臣君にわかりやすいと言われてしまった手前、卵を使わない美味しい何かを考えたくなるのが私である。

 もうカレーしかないんじゃないか?

 そう思ってると、タオルドライをやめた万里君が隣に立った。
 まだ髪は半乾きなのに。

 「あれ?手伝ってくれるの?」
 「手伝わせるっつったじゃねぇか」
 「冗談のつもりだったんだけど」
 「…」

 むすっとした表情。

 「芽李さん、俺に対して雑じゃね?」

 なんか、かわいいな?
 いや、顔は整っていると前々から思っていたが。
 弟か?弟なのか?
 ヤンキーじゃなくて弟属性なのか?

 などと言うことは胸の奥にしまって、ポーカーフェイスで続ける。

 「そんなこと、あるかも」
 「あるんかよ、趣味わりぃ」
 「ごめん、ごめん。あ、ほんとに大丈夫だよ。髪乾いてないし、風邪ひくよ」

 私が言うと、少し黙ったあとニヤッと笑った。
 よくない顔で。

 「俺、傷ついたんだけど」
 「うん?」
 「ヤンキーって言われるし、扱い雑だし。臣には手伝わせたくせに、俺にはいいって言うし」
 「あのう…」
 「朝食の準備、別に後でもいいだろ?」
 「いいけど、」
 「乾かして」
 「無理」
 「即答かよ。無理っつーのが無理。やれ」

 ヤンキーよ、横暴すぎん?

 「無理」
 「なんでだよ」
 「万里君のキューティクル、壊しそうだから無理」
 「意味わかんねぇ。壊れねぇから、やって」

 肩にかけていたタオルを押し付けてくる。
 ついでに腕を引っ張りソファの方へ。

 いや、手が汚れてなかったからいいけどさ?
 準備すら始めてなかったしさ?

 グイッと私をソファに座らせたあと、自分は床の方に座って私を覗き見る。
 策士である。
 さすがイージーモードなだけある。
 いや、私がちょろいのか?

 「お願い、芽李さん」
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