第17章 琴平

　珍しく片付けてあるソファの上に座る。
　気まぐれで掃除しておいてよかった。

　ちなみに、ソファ以外は相変わらずものが多いけど、そこは悪しからず。

　ぽんぽんっと膝を叩いて、まさかそこに座らせる気？と眉を顰めた芽李。

　いいじゃん、たまには。

　そう思ったのに、隣に座った芽李。

　「ちぇー」
　「ちぇーってなに？」
　「残念に思った時のオノマトペ」
　「そこに座る勇気はないよ？」
　「至さんの膝、なかなかの触り心地よ。知らんけど」
　「しらんのかい」

　それなら、と、そっと肩に腕をまわす。
　泣き疲れたんじゃないかなって。

　「な、なに、」
　「ありゃ、警戒モード発令中？ロック解除してー」

　と、戯けながらそっと手に力を入れた。

　「膝枕」
　「は？」
　「至さんのターンっていったでしょ」

　少し強引に寝かせる。
　オレにだって甘やかされてよ。

　「足、下ろしとくより肘置きくらいにおいた方が寝心地いいんじゃない？
　このソファの寝心地、万里にも定評あるからいいと思うよ」
　「なんのつもり？？」
　「子守歌もオプションでつけられますがいかがいたしますか？」

　ぽんぽんと、一定のリズムで頭を撫でる。
　芽李の頭はオレの膝の上。
　こうなったら、オレのターン。

　見ての通り、俗に言う膝枕だ。

　「なんの、曲」
　「おすすめは、ナイランかなー」
　「じゃあ、それで」
　「ほら、目とじないと。寝れないでしょ。せっかくの至さんのイケボ満喫しなよ」
　「たまにナルシはいるよね」
　「イケメンだからいいんだよ」

　そっと瞼あたりに手を乗せる。
　催眠術をかけるみたいに、このまま俺のものになれなんて、自分勝手に思った。

　ナイランの曲を口ずさみながら、芽李のことだけ考える。

　ゲームの回復音だって、今の俺には気にするに値しない。

　瞼を閉じた感覚がしてしばらくするとそっと手が移動させ、またゆっくりと頭を撫でる。

　「おつかれさま、芽李…」

　この際どこで泣いても、どこに行ってもいい。
　だから、帰ってくる場所は、芽李のホッと出来る場所は俺のそばであってほしい。

　なんて、ずるいだろうか？

　寝息が聞こえてきたのに安心して、ブランケットを芽李にかけ、俺もそっと目を閉じた。