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3月9日  【A3】

第17章 琴平


 「至さん、離れよっか?」
 「ほら、芽李さんも、言ってるじゃん」
 「えー、」
 「えー、じゃない。微妙に体重かけてきて重い」

 ぽんぽんと、腕を叩く。

 「ガキかよ」
 「"中学生"の幸には言われたくありませーん。芽李〜、至さん疲れたから我が城までそのまま運んでぇ」
 「はぁ?」
 「いいから、運んでぇ。この際幸でもいいからさぁ。20代男性に、オールはきついってぇ」

 よく言うよ、なんて思っていると呆れたようなため息をついた幸くん。

 「…付き合ってらんない。っていうか、オレこんな大人にはならない」
 「反面教師」
 「至さん、アンパンにワンパンされてヘロヘロになるバイキンの気分、ことばの暴力によってHPマイナス」

 のしっと、余計体重がかかる。
 幸くんは私を置いて、そのまま立ち去ろうとする。

 ちょっと、こいつホントどうにかしてくれ。

 キュンっとした、さっきの私返して。

 なんて思ってると、頭上から声が降ってくる。

 「幸」

 その声に幸くんは振り向かなかったけど、立ち止まった。

 「なに、」
 「ごめんな」

 ぐるんっと、振り返る。

 「そうやって、余裕こいてなよ。絶対、奪ってみせる」

 ニヤッと不敵に笑って、満足そうにまた背中を向けた。

 「なんの話?」
 「さぁ?」

 すっと、体温が離れる。

 「幸ってさ」
 「ん」
 「かっこいいやつだよな」
 「どうしたの、至さん。幸くんは、当たり前に出会った時から?いや、出会う前からかっこいいよ、すでに。
 私マンパニメンバー全力儲だから、いまから全然一年位語れるけど聞く?」
 「はぁ……」

 びっくりするくらいの、長い長いため息をつかれる。

 「お前さぁ、…って、半分俺のせいもあんのかな。まぁ、いいや。はよ。コーラ持って部屋戻ろ」
 「私が至さんの部屋行くのは確定なの?」
 「うん。だって、片付けとか準備とか気が済んだでしょ」
 「気が済むって」
 「慰めるのだって、幸がしてくれたようだし?」
 「はい?」
 「今日は、功労者の幸に譲っただけだから。あとは、至さんのターンね」
 「…至さん、何言ってるかわかんないんだけど」
 「とりあえず、コーラ」

 グイグイっと至さんのペースに乗せられるままに、コーラはもちろん持って部屋まで連れてこられる。
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