第17章 琴平
「って、私が言うことじゃないか。それこそ、みんなの総意っていうか、」
随分恥ずかしいことを、言ってしまったかもしれない。
「…」
「い、いづみちゃん?」
近寄ってきて、ぎゅっと抱きしめられる。
あ、コレ、真澄くんにキレられるやつだ。
なんて、どっかで思いながら、その腕をポンポンとさする。
「私も、思ってるから!芽李ちゃんが、カンパニーにいてくれてよかったって!
コレからも、思ってるからね!?」
パッと私を離して、
「…」
「そういうことだから、おやすみ」
照れたように、談話室から出てってしまったいづみちゃんにはもう聞こえないだろうけど、うなづく。
「ははは、うん」
いづみちゃんがいなくなって、みんなもそれぞれの部屋にもどって、昼間だと言うのに静まり返った寮内に、なぜかここにきた当初のことを思い出す。
秋組の衣装の手直しで、少しだけ散らかった談話室だから余計かもしれない。
「片付け、しちゃうかー」
空間にのまれ、寂しく声が消えてく。
なんて表現はさすがにセンチすぎか。
我らが皆木大先生に添削頼まないと。
なんて思いながら、元々衣装だった、破られたままの、使われなかったままの床に散らばったそれを、そっと拾い上げてグッと込み上げるものを感じる。
いまかよ、なんて思いながら、ぐっと涙を拭った。
差し入れの準備も、みんなが起きてから食べるだろうと作った軽食の準備もおわった。
ここを片付けて仕舞えば、あとは終わり。そしたら、少し休もう。秋組の公演まで、余裕がある。
余計なことは考えないように、意識的にそらして止まりそうにない涙を必死で止めようと考える。
幸くんや、万里くんが中心になって、あんなに立派に直された衣装。
みんなのサイズもピッタリだった。
きっと、今回のことで、余計秋組だって団結したに違いない。
万里くんと十座くんだって、今回のことで余計バディ感が増した気がする。
…ただ一つ気がかりなのは、太一くんだけど。
「…っ、びっくりした」
声が聞こえてきて、振り返ろうとするも酷い顔になってそうでやめた。
この声は幸くんだ。
「何してんの、って」
「…あぁ、」
近づいてくる気配。
なんとか、言わないと。
「片付け、やっておこうと思って」