第16章 鬱金
許すまじ。
なんか、距離近すぎ問題。
ソファから立ち上がり、むすっとしたままに近づく。
「そ〜なんだぁっ!めいはね、と〜っても三角!と〜っても大事!絆創膏みたいで、優しくて大好き〜っ」
「ほらな?」
芽李の顔が赤く染まる。
「まっかっかだぁっ」
「まっかっかだな。三角、これ運んでくれるか??」
「いいですよ〜っ」
三角が離れて、まだ食べてない組の朝食の用意が済まされるなか、俺はさらに芽李へと近づく。
「芽李、三角と臣に口説かれてたでしょ」
「は?い!?」
「芽李口説いていいのは俺だけだし、芽李が口説かれてもいいのは、俺だけだから。わかってる?」
むすーっとしながら言う。
「よゆーねー男は嫌われんぞ。至さん。
芽李さん、俺もアンタんとこ千穐楽に口説く予定。
惚れさせてやっから、覚悟しとけ〜」
「なっ!万里お前…夜フルボッコにしてやるから、覚悟しろよ?」
「物理的に?」
「ゲームに決まってんだろ」
「はいはい、至さんそこまで。臣君と美味しいご飯作ったから至さんも、食べるでしょ?」
宥めるように芽李にいわれて、うなづく。
「ほんじゃあ、俺も行ってくるかなー。咲也も真澄も食い終わったみてぇだし、」
「さすが万里君。きをつけてね、」
「あぁ」
「万里、行ってらっしゃい」
「はーい」
咲也達の方へと行った万里を見ながら、芽李が優しく笑っている。
「万里君、いい顔するようになってきたね」
「え?」
「初めて会った時、せっかく綺麗な顔してるのに傷だらけでさ、つまんなそうな目しててさ、心配だったんだよね」
同じこと思ってたけど、もやっとした。
「そんな前から知り合いなの?」
「ほら、前に私が迷子になってかずくんと、至さんが迎えに来てくれたことあったじゃん、その時駅まで連れてってくれたのが万里君…って、この話したことなかったっけ?」
「多分話してない。…そーか、あの時なんで芽李が駅に居たのか気になってたんだよね。
いくら方向音痴でも、駅からなら帰れるじゃんってさ」
「方向音痴ではない」
「迷子になりがちなのに?…って、まぁいいや。早くしないと仕事初日から遅れるよ」
「そうだった!」