第16章 鬱金
後ろから聞こえた咲の声に振り向く。
「至さんが、私と咲似てるって言うから」
「ーっ!嬉しいですっ」
「朝から、いいものを見た。芽李も咲也もかわいいね。茅ヶ崎家に養子にくる?
むしろ俺を養子に入れて、扶養にしてください」
「咲、行こ」
「芽李が冷たい…」
いつもの様子を取り戻した芽李に、少しだけホッとして、ソファーに座る。
「たるさん、はよー」
「おう、万里。飯は?」
先にソファに陣取っていた万里は、スマホでゲームしている。
「もう食った」
「はや」
「仕事は?」
「有給」
そういったとき、やっと目が合った。
「ずりー。俺もサボろーかな」
「監督さんと、芽李に嫌われるぞ。ついでに咲也にも」
「…至さんの弱点今改めてわかった」
「は?」
「仕方ねぇから行くしかねぇか」
「頑張れ頑張れ。俺は一位独占しとくー」
「ほんとずりぃ、つかいいのかよ?」
「なにが?」
「臣と、芽李さん距離近くねぇ?」
ニヤッと万里が笑う。
「いや。いつものことだろ」
なんて、余裕のあるふりをする。
「ふーん…あ、至さん」
「なんだよ?」
「コレ一緒にやらね?」
「まぁいいけど」
芽李と臣の様子を横目で気にしながら、最近万里がハマってるゲームのアプリを開く。
「至さん、俺が勝ったら」
「断る。聞くまでもない」
「ひでぇ」
「万里がその顔する時は碌なこと言わないから」
「散々じゃねぇかっつーか、ヤキモチかよ」
「あ?」
「八つ当たリーマン」
げしっとつま先を踏む。
「大人気ねぇー、」
「うるさい。ほら、やんないの?」
「へいへい」
まぁ、もちろん。
生意気な万里は秒で…いや、分で?
フルボッコにしてやったけど。
「容赦ねぇ」
「俺のスイッチ入れたのはお前」
ツーンとしてキッチンを見ると、やけに芽李と臣それから三角の距離が近くなっていた。
「至さん?」