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3月9日  【A3】

第15章 一葉


 「う…、おっしゃる通りデス」
 「ばーか、」
 「…ごめん。勝手に決めつけて、酷いこと言った」
 「僕って、芽李からしたらそんなに信用ないんだって思ったら、何か」

 グッと拳に力が入ったのが見える。

 「なんか、…でも、当たり前だよなってどっかで思ってる自分もいて、変な感じがする」
 「晴翔」
 「まずは信用してもらうところからだよな。うん、…いーよ、今は答える言葉持ってなくても。
 好きな相手がいても、むしろ上等だよ。勝ち取ってこその1番だしな」
 「何の話?」
 「まだ、諦めたくないって話。僕が、満足するまでやめない。
 これは、僕の気持ちだから、せいぜい悩め。ばか芽李」

 あっかんべーをした後に、アレンジメントを抱え直す晴翔。

 「また買いに行くから、そんときはよろしく。
 財布ありがとう、おばあちゃんにもよろしく言っておいて」
 「はると、」
 「嫌がらせ、僕も探っといてあげる。
 好きな子を、傷つけてるままにしとくなんて美しくないしね」
 「…」
 「疑ったこと、後悔させてやる」

 悪戯にニヤッと笑った、晴翔。
 …急に真剣な顔つきになる。

 「犯人見つけたその時はさ、僕のこと少しは認めてよ。
 好きなやついることも、ちゃんと受け止めたからさ。
 芽李が、好きなやつとうまくいかなかったら、その時は僕のことちゃんと見て」
 「それは」
 「今は答えはいらないっていったでしょ。じゃー、またね。芽李」

 晴翔は私の答えも聞かずに、また背を向けて歩き出す。

 彼らしいというか、何というか。
 酷いこと言った自覚があるから、うまく話せない。

 確かに証拠もないのにきめつけるなんて、良くなかった。

 私の方かもしれないのに。
 モヤっとした感情が浮かぶ。

 千景さんはあの時、春から本格的に動きがあるはずって、そんな感じのこと言ってたけど、それだってまた話が変わったのかもしれないのに。

 自分のせいかもしれないのに。

 来た道を引き返す。
 少しだけ怖くなって、歩くスピードを上げた。

 公演に支障をきたしたらどうしよう。

 そんな不安が浮かぶ。

 今はだめだ、仕事中なのに。

 「ただいま、おばあちゃん」
 「おかえり、芽李ちゃん。仲直りできた?」
 「はい」

 誤魔化すように笑った。
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