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3月9日  【A3】

第15章 一葉


 「抱きしめてんの、わかんない?」
 「わかるけど、」
 「何処行ってたの、ばあちゃんに聞いてもわからないっていうしさ」
 「晴翔に関係なくない?なんでそんなこと、いちいち言わなきゃいけないの?」

 今の一言は、私が酷かったかもしれないけど。

 そのせいか腕がさっきよりも強められる。

 「関係ある、」
 「え?」
 「あそこに行かなきゃお前に会えないのに」

 何でそんな切ない声を出すんだ。

 「晴翔…」
 「ゴット座に入ってくれないなら、せめて会える場所にいてよね」

 何でそんな切ない声で言うのさ。

 「……晴翔」
 「…」
 「離して」

 ゆっくりと離れた体温。

 「財布、ちゃんと返したからね」

 ぽすっと胸元に押し付ける。

 「抱きしめられても、晴翔には答えられない。
 …前にもいったかもしれないけど、晴翔の気持ちに返せる言葉私は持ってないから」
 「…」
 「こういうこと、されても困る」
 「それでも、僕は芽李が好きなんだよ」

 熱い視線を向けられても、私はそれに応えることはできない。

 「晴翔の好きと、私が晴翔に思う好きは違う。
 …好きな人がいるの。
 どうしようもなく、好きな人がいるの」
 「MANKAIカンパニーの奴?」
 「そうだよって言ったら……もっと嫌がらせしてくるの」

 晴翔の目が揺れる。

 「何の話、」
 「脅迫状とか、無言電話とか、」
 「そんなのする訳ないだろ」
 「MANKAIカンパニーがそんなに嫌い?」
 「決めつけんなよ!証拠でもある訳?」

 ぐいっと肩を掴まれる。

 「証拠…」
 「何で、僕が!好きな子が傷つくようなこと、しなきゃいけないんだよ!
 嫌がらせなんてする訳ないだろ、」
 「嘘つき」
 「嘘って、決めつけんなよ」

 晴翔の大きな目が私を捉える。

 「そんなこと、しないから。

 だいたい、脅迫状とか無言電話とかタチ悪すぎない?されてんの、芽李」

 「カンパニーが、被害受けてて…フライヤー破かれたの思い出したのもあるし、ゴット座がまたなんかしたのかなって」

 黙った私に彼が一つため息を吐いた。

 「僕の気持ちに答えられないからって、証拠もないのに俺らのせいにするのはずるくない?
 しかもそれを今いうって、かなり良い性格してるね?」
 
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