第15章 一葉
「臣くんに言うのずるいかもしれないんだけど、1番俯瞰的に見てくれそうだから」
「…芽李さんは、よく見てるんだな」
「あ、いや…うん。なんて言うか、うん」
「左京さんのことも、万里のことも、十座も、俺も似たようなこと思ってた。
アイツらと舞台に立つの、楽しみだ」
優しそうに笑った臣くんが、少しだけ目を伏せる。
「俺はさ、まぁ…うん。なんて言うか、…そうだな。
芽李さんが劇団に誘ってくれて、よかったと思ってる。
太一の様子も、同室だし気になってる部分はあったんだ」
「そっか…余計なこといっちゃったね」
「いや、そんなことないさ。やっと芽李さんが揃ったからな。
本格的に始動したって感じがするよ」
「え、」
「ここだけの話、夏組の千秋楽も秋組のオーディションの時も、初めて見たMANKAIカンパニーの印象と違ったからさ。
芽李さんが帰ってきて、最近やっと他の組のやつらも調子取り戻してきた感じだなって思ってたんだよ」
「っ、」
ばっと、
横を見れば臣くんが優しく笑って、そして目の前に視線を動かしたのを見て、私も同じように視線を動かす。
起きてきたみんなが、テーブルを囲んで談笑している。
「最近まで、あんなに明るい雰囲気じゃなかった」
「うそ、」
「音信不通だった芽李さんと、一回だけ電話が通じたことあっただろ?」
「うん、」
「あの日もなかなか大変だったんだ。劇団員総出で探しに行くとか何とかなって」
「…」
「至さんは、知ってると思うけど…何で十座で俺じゃないのってずぅっと言ってた。しつこいくらいに」
「あぁ…」
「それから、左京さんも組のもん向かわせるとかなんとか言い出して、…咲也がいつも宥めてた」
「咲が?」
「1番心配してるのも咲也だったけど、1番芽李さんの事を、言葉を信じてたのも咲也だった。
芽李さんが待っててって言ったからって。
………いい弟を持ったな」
視線の先で、ちょうど咲がみんなと笑い合ってて。
「自慢の弟だから、ね」
「咲也にとってはもちろんだけど、劇団の奴らにとっても、やっぱり芽李さんは欠かせない存在なんだなって、改めて思ってるよ」
「そんなこと、…役者でも監督でも何ができるわけでもないのに」