第15章 一葉
「きゃああああああ!」
支配人の声が寮内に響く。
すごく、女子より女子だった。
きゃーって。
などと思いながら、その声の方に行く。
「ど、どうしたんですか?」
「支配人、朝から元気っすね」
例えば、小指を何かにぶつけたとか。
左京さんにしばかれたとか。
私はそれくらいにしか捉えてなかったから、
「耳が痛ぇ…」
「こ、ここここれ!」
「手紙………?」
いづみちゃんが受け取ったそれを覗き込む。
『警告は終わっタ。コレより先、実力行使ヲ行う」
「え…」
「これ、前と同じ脅迫状じゃね?」
前なんて、知らない。
「……」
激しく胸がなったのは、身に覚えがあり過ぎたから。
まさか、私の親戚?
それとも、…ゴット座?
どっちにしろ、許せない。
実力行使って何?
「宣戦布告か」
「……ふざけやがって」
「嫌な感じだな」
私の大好きな劇団を傷つけようとするなんて、何があっても、誰が敵でも許さない。
もし、そんなことになったら、
地の果てまで追って、同じように…
なんてことはしないけど。
そうなる前に、全力で止めてやる。
そう意気込んだ時、
ぽんぽんと、頭にのった手。
「考え事?」
さっきまでは見当たらなかったその人に。
「?」
ぴょんぴょんと結ばれたせいで跳ねる前髪。
「みんなもう、席ついてるよ」
いつものスカジャンを着てる。
「え、あ?うん。至さん、おはようございます」
「おはよー」
「今日、ゆっくりですね?」
「そうそう。イベント最終日だから、有給つかったんだよね」
至さんと話したら、さっきまでのモヤモヤがどこかに行ってしまったよう。
「有給、いいですねぇ」
「芽李は?」
「しばらく顔を出してなかったので、職場に行こうかと。いつまでも待ってるからって優しい言葉を貰ってるので」
ふーん、っと、息を漏らした後。
「乗せてこーか?」
「え?!」
「ライフまだ溜まんないから」
至さんが、なんでもない様子で言う。
「いいんですかっ」
「はは。その顔咲也にそっくり」
「嬉しいっ」
「オレがどうかしました??」
後ろから聞こえた咲の声に振り向く。
「至さんが、私と咲似てるって言うから」