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3月9日  【A3】

第15章 一葉


 「段ボールばっかりあってもジャマだし、一つずつ片付けるか」
 「そうだな」

 男手が多くて助かる。
 こういう、作業の時は。

 「芽李さん、こっちいい?」
 「うん、あー、万里くん」
 「あんだよ」
 「15位から同率3位まであがったよ」
 「何がだよ」
 「私的世界一可愛い弟ランキングだよ」
 「なんでだよ」

 言いながら、耳を赤く染めてる。

 「太一くんにムキになったとこ」
 「う」
 「なんか、少し万里くんのことわかった気がする。もっと知りたいけど」
 「…俺のこと知りたいなら、芽李さんの彼氏にしてもいいやつランキング1位にしろよ」

 言いながら照れてる。
 そう言うとこだぞって言いたい。

 「うーん、ガチレスするとさ」

 みんながそれぞれ動いてるのをいいことに、

 「なに?」
 「万里くん確かに器用だし、奥さんになった人凄く幸せだと思うんだけどね」

 手を動かすのはやめずに、本音をこぼす。

 「婚約者と、好きな人がいるので。万里くんがもし私を想ってくれるなら、それには応えられないよ」

 なんて。

 「万里くん?」

 固まった万里くんに、まさか本当に私を想ってくれていたとしたら、さっきの伝え方は不誠実だったんじゃないかと思い始める。

 「は?え?」
 「万里くん?」
 「好きな人はともかくとして、婚約者ってマジ?」
 「マジ」
 「って、違うだろ。好きな人が婚約者になるんだから、つまりえっと?」

 嘘みたいに万里くんがポンコツになってる。
 いや、ならざるをえない事を私が言ったのかもしれない。

 「今の話って登場人物2人って事だよな?」
 「そうだね」
 「…へぇ」
 「何?」
 「好きな人って至さんだろ?」
 「ぇ」
 「婚約者って、カンパニーの人間?」
 「……」
 「大体読めたわ。あんま、無理すんなよ」

 ポンっと頭を撫でて私の分まで荷物を持つと、スタスタと行ってしまった。

 ポカーンとする私。

 いや、アレだけで分かったの?
 流石に万里くんすぎない?

 万里くんすぎるってなんだ。

 やっぱり弟ランキングじゃなくて、私的世界一良い兄ちゃん的ポジションランキングの方の同率3位に入れてあげよう。

 ちなみに1位はお察しの通り、綴くんである。

 
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