• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第15章 一葉


 「圧倒的弟」
 「第一声それかよ」
 「私的、世界1可愛い弟ランキング1位ちなみに咲は殿堂入り」
 「それはもう実質2位なんだよ。太一が不憫だな」
 「万里くんは15位」
 「納得いかねぇし、数字がリアルだし腹立つ!3位から14位誰だよ!」
 「3位は真澄くんと、天馬くん…と言うか夏組でー」
 「同率かよ!」

 馬鹿みたいなやりとりをしていると、

 「ヨーヨー?」
 「こんなの頼んでないけど」

 なんて声が聞こえてくる。

 「おもちゃの銃のサイト見てたら売ってて、懐かしくてポチったな〜ってね」

 迫田さんの言葉に、迫田さんにもそんな時代があったんだなぁと微笑ましく思う。

 「経費の無駄遣いすんな!!」
 「いてー!」

 ゴスって言ったよ、あのゲンコツは絶対痛かったとおもう。
 迫田さんを憐れみながら、万里くんがそれに手を伸ばすのを見てた。

 「ウルトラヨーヨーって昔、超流行ったよね」
 「懐かしい」
 「あ!実は俺、めっちゃ得意!」

 ぱぁああっと、明るく言った太一くんに、やっぱりさっきのはなんでもなかったのかと、安心した時…

 「ーっと!」
 「すごい……!」

 ビヨーンビヨーンと、やり始めた万里くん。

 「へぇ」
 「これは避けられるか分からねぇな……」
 「いや、これ武器じゃないから避けなくていいぞ」

 そんなドラマあったな。

 「昔のドラマにそんなのあったけどな」
 「左京さん、若い子はみんな知らないですよ!」
 「何……?」
 「しかし、うまいもんだな」
 「昔、めっちゃ練習したから」

 キラキラしてた顔に一瞬の曇り。

 「へー、俺もやってみよ」

 リズムよく万里くんの手に収まるそれを見ながら、ふと太一くんが気になって。

 「なる……こんな感じか………っと」
 「わ、すごい!」
 「さすがハイスペック」
 「器用なもんだな」

 みんなが褒めるそのそばで、

 「まぁね」
 「……」
 「太一?」

 太一くんのその表情を見てしまったから。

 「やっぱ万チャンにはかなわねぇなー!
 俺がどんだけ練習したと思ってんだよー!」

 太一くんは笑い飛ばしたけど、ベンジャミンと相まって、悔しさを隠したその強さと優しさがとても儚く見えて。

 「しょうがねぇだろ、なんでもできんだよ」
 「嫌味だ!」

 胸が痛い。
/ 553ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp