第15章 一葉
「馬鹿犬は?」
幸くんの言葉に、そう言えばとあたりを見るとベンジャミンじゃない太一君がいた。
ベンジャミンの太一くんみたいな…。
「…」
「太一くん?」
いづみちゃんの声でハッとした太一君。
違和感を感じたのは気のせい?
「へ!?あ、俺も着てみるっス!」
「どうかしたの?」
「なんでもねぇッス!みんなかっけぇなぁと思って!幸ちゃんすげー!」
「いいから早く着ろ」
呆れたような幸くんの指示に従うように、着替えに行った太一くん。
「…」
「ねぇちゃん?」
「ん?」
「ねぇちゃんまでどうかしたの?いつもだったら、太一くんのさっきの言葉にすごく同調しそうなのに」
「あぁ、うん。ベンジャミン見たすぎてきいてなかったのかも」
「そう?」
ベンジャミン、気になったけど。
太一くんの一瞬歪めた顔が気になる。
あの表情の意味は何?
「あれ?この箱はなに?」
「ああ、それはー」
「アニキ!瑠璃川の姐さん!ブツが届きやしたぜ!」
「白昼堂々と密輸宣言が…」
「見てくだせぇ!どれも一級品ですぜ!」
「ピストル…!?」
「これ、本当にまずいやつじゃないっすか」
「ザコ田、紛らわしい言い方するな。小道具だよ」
小道具もいつもなら気になるし、それを身につけるみんなを見ているだけでテンションも上がるのに。
「あぁ、なるほど」
「よくできてんなぁ」
「持った感じも悪くない」
太一君が戻ってきたら聞いてみよう。
気のせいならいいんだけど…。
「その衣装に持つと、はまるねー」
「しかし、こーやって見ると、完全に犯罪集団だな」
「本当だ」
「おーい、どう?芽李さん。俺、かっこいいっしょ?」
万里君がひらひらと目の前で手を振る。
いけない、ぼーっとしてしまった。
「うん、かっこいいよ。ルチアーノ!万里君がルチアーノするの嬉しい。
秋組が、みんなで嬉しい」
「そーかよ、」
「うん」
そんなやりとりをしていると、太一くんが戻ってきた。
ベンジャミンの服装のせいか、やっぱりほっとけなくなってしまう。