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3月9日  【A3】

第15章 一葉


 「遅い」
 「ごめん、息切らしてて」
 「咲也と競争って、芽李もいい大人なんだからさ、少しは考えなよね」
 「おっしゃる通りで」
 「芽李ちゃん、おかえり。間に合ってよかったね」
 「いづみちゃんもごめんね。秋組のみんなにも申し訳ことしたな」

 と言うと、後ろから万里くんの声。
 
 「いや、問題ねぇよ。その間稽古してたしな。それと、夏組からコレは恒例って聞いてる」
 「ひぇっ」

 ビンテージのストライプの茶色のスーツに、紅いシャツ。黒いネクタイと手袋。
 なんか襟についたもふもふのコートに、帽子を被ってる…

 「今回は既製品のアレンジだったから、かなり前倒しでできた」
 「おおーかっこいい!」
 「解釈の一致がすぎて、つらい」
 「は?…って言うか、芽李さん。解釈の一致の前に、脚本よんだのかよ?役知ってる?」
 「役って何、ルチアーノ」
 「ねぇちゃん、オレと談話室いる時ずっと読んでたもんね」

 ねぇ、なんで遠い目してんの、ルチアーノ!

 「結構印象が変わったな」
 「うん、うん。ちょっぴりレトロな印象を入れつつ、オリジナリティもあるっていうか…」

 でゅ、デューイがいる…。

 「そのままだと舞台映えしないから」
 「…へ〜、結構いい感じじゃん」

 チョンチョンとルチアーノを触ってみる。
 
 「ランスキーはどこ?」
 「まだ着替えてる」
 「待たせたな。サイズはぴったりだ」

 ら、ら、ランスキーだー!

 「ネオヤンキーとテンプレヤンキーはそこ並んで」
 「並ばれたら萌死んじゃうんだけど」
 「芽李さん、話ややこしくなるから少し黙って」
 「ネオ?」
 「テンプレ…」
 「ヤンキーコンビは並んだ時のバランスが大事だから」

 そう言って、服の裾をピッピってやって直してる幸くん。
 もう、プロの手つきでかっこいいよ。
 全てが。

 「…まぁまぁかな。もうちょっと調整はするけど」
 「めっちゃ手伝うからなんでも言って」
 「当たり前でしょ。今までの分、こき使ってやる」
 「幸くんかっこいい」
 「バカ犬がまた一匹ふえたか」

 なんで茶番をしていると、感心したいづみちゃんがしみじみ言った。

 「並ぶと、またバディ感があってかっこいいね!」
 「うん、うん!萌えちゃうよね!まんまだよね!かっこいい」
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