第15章 一葉
「カンパニーのためだよ」
「え?」
「咲がカンパニーにいることはバレたけど、私がここで働いていることはバレてないから」
「何が言いたいの」
「ヘタをすると、咲と私だけじゃなくてみんなが居場所失うことになっちゃう。だから、咲。お願いがあるの」
「…」
黙ったままの咲。
ごめんね、咲。
「咲は、舞台の上で咲き続けて。私が咲を見失わないように。
また、咲の元に帰って来られるように」
咲と目が合う。
「…ねぇちゃんは、これからどうするの」
「私は、冬が終わったらまた北海道に戻るよ。
今度こそ、ちゃんと終わらせられるように」
「もう会えなくなる?」
「ううん、そんなことない。年に4回だけ、本州に来られるように約束してもらったから。
みんなの公演みたいし、咲と会いたいし。終わったら帰ってくるよ。私の居場所は、咲がいるMANKAIカンパニーだから」
「…まだ傷つくの」
「もう傷つかないよ、守ってくれる人がいるから」
「…至さん?」
思わずキョトンとしてしまった。
「どうしてそこで至さんがでてくるのよ」
「だって、ねぇちゃん至さんのこと、好き…なんでしょ。至さんも、ねぇちゃんのこと、想ってるよね」
咲の真剣な眼差しに、いつのまにかそんなことまでわかるようになったんだと、なんか少しくすぐったくなった。
「ううん、至さんじゃないよ。だけど、…だけど、頼りになる人だから、大丈夫」
「…っ、ねぇちゃんはそれでいいの?」
「うん、決めたことだから」
「至さんは、」
「…………うん、いいの。いいのよ」
「本当に言ってるの?」
咲が不安にならないよう、にっこりと笑う。
「うん。だから、至さんのことよろしくね。咲。至さん、すぐサボろうとするから」
「…」
「咲、冬が終わったら、私はもうここにはいられないけど、でもずっと咲のこと見てるから。
咲を思って頑張るから、だから咲も」
「…オレだって、思ってるから。ねぇちゃんのこと、思って舞台に立つから、だからねぇちゃんは、オレを諦めないで。
今までみたいに、オレのこと、…そしたら、またすぐに会えるから。そうでしょ?」
「うん、」
咲、
ごめんね、
また、手を離してしまう。