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3月9日  【A3】

第15章 一葉


 「咲の気持ち教えてくれてありがとう、」
 「ねぇちゃん、泣かせてごめんね」
 「ううん、ねぇちゃんこそごめんね。…至さんに、咲の前でカッコつけてるって指摘されて、どこか腑に落ちたの。
 咲に嫌われたくない。頼りにされたい。ずっと一緒にいてほしいって、思ってる。
 何より、咲のこと傷つけたくない。誰よりも、だいじだから」
 「…」

 自分より大きな身長の柔らかな桜色の髪を撫でる。

 「咲、生きててくれてありがとう。まっすぐ育ってくれてありがとう。…覚えててくれて、ありがとう」
 「うん」
 「あとね、しばらく留守にしてた件なんだけど。聞いてくれる?」
 「うん」

 再び土手沿いに歩き出して、今までの状況をどこまで説明できるか考える。

 「まず、…法事って言うのは嘘」
 「…なんとなく、そうじゃないかなって思ってた」
 「そっか、…わかってたか。
 じゃあ、咲と2人でお世話になってたあのお家のこと覚えてる?」
 「少しだけ、なら」
 「そう、その…そこのね、おじさんのお家すごく借金を抱えてるんだって」

 咲黙って聞いてる。

 「金銭面ですごくお世話になったの、大学入れてもらったり。だから、私は返さなきゃいけなくて、…」

 そう言った時、咲の瞳が揺れた。

 「ねぇちゃんは、1人でずっとあのお家にいたの?」
 「え、」
 「俺がいなくなった後も、ずっと?」
 「ううん。咲が居なくなってすぐ、私もあの家はでたよ。ただ、未成年だってこともあって、なかなか金銭面が弱かったからさ。
 咲はもう覚えてないかもしれないけど、両親と4人で暮らしてた場所に住んでたの」

 ほっと安堵のため息をついた咲。

 「大家さんがすごくいい人でね、よく気にかけてくれてて。…咲にも会いたがってた。…って、話を戻すね。それで、借りた分は高校を卒業して働いてもう返し終わったんだけど、利子があるって痛いとこつかれちゃってさ」
 「そんな…」
 「咲はそんな顔する必要ないんだよ?…それで、この間話をつけに行ってたの。しばらく時間かかっちゃったけどね」
 「もう解決したんだよね?」
 「ううん、まだなの」
 「え、」
 「ごめん咲、また1人にさせてしまう」

 咲がまた足を止める。

 「俺も行きます」
 「ううん」
 「どうして!」
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