第15章 一葉
「咲の気持ち教えてくれてありがとう、」
「ねぇちゃん、泣かせてごめんね」
「ううん、ねぇちゃんこそごめんね。…至さんに、咲の前でカッコつけてるって指摘されて、どこか腑に落ちたの。
咲に嫌われたくない。頼りにされたい。ずっと一緒にいてほしいって、思ってる。
何より、咲のこと傷つけたくない。誰よりも、だいじだから」
「…」
自分より大きな身長の柔らかな桜色の髪を撫でる。
「咲、生きててくれてありがとう。まっすぐ育ってくれてありがとう。…覚えててくれて、ありがとう」
「うん」
「あとね、しばらく留守にしてた件なんだけど。聞いてくれる?」
「うん」
再び土手沿いに歩き出して、今までの状況をどこまで説明できるか考える。
「まず、…法事って言うのは嘘」
「…なんとなく、そうじゃないかなって思ってた」
「そっか、…わかってたか。
じゃあ、咲と2人でお世話になってたあのお家のこと覚えてる?」
「少しだけ、なら」
「そう、その…そこのね、おじさんのお家すごく借金を抱えてるんだって」
咲黙って聞いてる。
「金銭面ですごくお世話になったの、大学入れてもらったり。だから、私は返さなきゃいけなくて、…」
そう言った時、咲の瞳が揺れた。
「ねぇちゃんは、1人でずっとあのお家にいたの?」
「え、」
「俺がいなくなった後も、ずっと?」
「ううん。咲が居なくなってすぐ、私もあの家はでたよ。ただ、未成年だってこともあって、なかなか金銭面が弱かったからさ。
咲はもう覚えてないかもしれないけど、両親と4人で暮らしてた場所に住んでたの」
ほっと安堵のため息をついた咲。
「大家さんがすごくいい人でね、よく気にかけてくれてて。…咲にも会いたがってた。…って、話を戻すね。それで、借りた分は高校を卒業して働いてもう返し終わったんだけど、利子があるって痛いとこつかれちゃってさ」
「そんな…」
「咲はそんな顔する必要ないんだよ?…それで、この間話をつけに行ってたの。しばらく時間かかっちゃったけどね」
「もう解決したんだよね?」
「ううん、まだなの」
「え、」
「ごめん咲、また1人にさせてしまう」
咲がまた足を止める。
「俺も行きます」
「ううん」
「どうして!」