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3月9日  【A3】

第14章 冬桜


 ぎこちない距離で少し不器用な私たち姉弟は、ゆっくりと関係を構築していこう。

 どこか歪でもいい、だけど、もう…離れないように。

 「今日はもうおそいから、明日話そう。ねぇちゃん、ベット使っていいよ」
 「いや、いいよ!部屋戻る」
 「ねぇちゃんの布団、多分干してないよ。オレのは昨日干したばっかり」
 「う、…じゃ、じゃあさ!じゃあ、一緒に寝よう!」
 「は?!」

 今日一のは?!をいただいたところで、咲の背中を押す。

 「いいじゃん、姉弟なんだから。問題ない」
 「ちょ、」

 咲にばっかりリードされるのも悔しいし。

 渋々ベットに上がった咲を追いかけてのぼり、2人で狭いベットに寝転がる。

 「まったく、強引なんだから」
 「咲のおねぇちゃんだからね。電気消すよ?」
 「うん、…なんか、こうしてると思い出すね、」
 「そう、だね」

 電気が消えて、感じる咲の体温に酷く安心して。

 「ふぁあっ」

 布団を半分こずつ掛けて、それだけで幸せな気持ちがした。

 そして、ゆっくりと眠気が襲ってくる。

 咲が何か言ってるのに、…。
 あした、ちゃんと聞くからね。

 




ーーーーー
ーー




 人の気も知らないで、隣で寝息をたてる姉に言いたいことは山程あった。

 自分勝手だ、とか
 1人で抱え込むな、とか。

 だけど、結局それはオレを中心に考えてくれてるからって、本当はわかっていた。

 だから、あの時離れたんだ。

 オレがいなければ、この人がもう少し楽に生きられると思ったから。

 ゴロンと寝返りを打って、モゾモゾとオレに擦り寄るこの人は、本当に姉かと疑いたくなるほど、目を伏せているだけで幼く見える。

 だから、ぎゅっーっと抱きしめてみた。

 壊れそうで、壊したくない。
 だけど、誰にも取られたくない。
 オレが守ってみせる、こんどこそ。

 なんて、らしく無い。


 そうしてるうちに眠くなって、オレも目を閉じた。

 なんだかすごくいい夢が見られた気がする。




ーーーーー
ーー



 
 目覚ましが鳴って、朝を迎えたのだと覚醒しきらない頭で思う。

 自分に巻き付いているうでで、ここが自分の部屋ではなかったことを思い出した。

 んんっと、身を捩らせた咲も私と同じで目覚めはいい。

 「……おはよ、ねぇちゃん」
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