第14章 冬桜
「例えばさ、俺はこう言う姿他人には見られたくないし、見せないし、」
「うん」
「真澄のすぐ突っかかるとことか、綴の脚本脱稿後の姿とか、シトロンのボケ…は、まぁ誰にでもするか。
それから、咲也の芽李に対する態度とか、そう言うのって甘えられるから素直に出せるわけじゃないですか、」
「…」
「甘えられるって言うのはつまり、心を許せるから甘えられるんでしょ。って、至先生思うんですけど、」
「弟には甘えるんじゃなくて、甘やかしたいんだもん」
「それは、咲也だって同じでしょ」
そう言われて考える。
「咲也も年頃だし、守られるより守りたいってカッコいいじゃん」
「…」
「もう、助けてもらってばかりいた、小さい咲也じゃないんだよ芽李」
「それは…わかってるよ」
「芽李」
トントンと、こんな夜中にドアを叩く音。
「はーい」
至さんが返事をして、勝手に開いたドア。
「至と相部屋のお誘いなんて嬉しいネ!今夜はねれられないヨ」
「なんてなんて」
「スロット回してばっかりだったアナタから、誘われるなんて。さぁ、娘は子供部屋行くネ」
「どういうこと」
私が頭にハテナを浮かべていれば、次に召喚されたのは綴くん。
「って、至さんこんな夜中に呼び出さないでくださいよ」
「綴、芽李のとこあいつの部屋に連れてって」
「は?って、…あぁ、もう。わかりましたよ。ったく、俺も明日朝早いのに。ほら、芽李さんいきますよ!」
ぐいっと腕を引かれて連れてこられたのは、101号室。
「ほら、入ってください」
「ガチで言ってる?おねぇちゃんクビ判定された私にどんな所業なの?」
「俺も課題の徹夜明けできょうは、ゆっくり寝ようと思ってたんです。早く入って、チャチャっと解決してください。ふぁっ、」
ガチャっと勝手に部屋を開けて、
「咲也入るぞ、あとは頼むな」
なんて無責任な、綴君。
眠そうに出て行った彼と、残された私。
「あのさ、咲…急にごめんね、なんか、戻った方いいよね、私ね?なんかほんとに、ごめん、って、」
俯いたのは、もう顔を見れないほど目に涙が溜まったことに気づいてしまったから。
溢れないようにすることだけに集中した。