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3月9日  【A3】

第14章 冬桜


 「なのにさ、咲ってば、春組のみんながいるから家族じゃなくていいって言うしさ、役者だからって何?
 他人演じるってこと?それとも弟演じてくれるの?いや、それはなくない?
 仲違いっぽくなってるのに、弟演じてくれるわけなくない?」
 「うん、うん」
 「シトロン君ずるくない?私を差し置いて咲と同じ部屋でさ、真澄君もずるいよね、なんで一緒に登校してんの?私だって小学校の時咲と手を繋いで登校したかったのに。咲に起こしてもらっちゃってさ、私が咲を起こしたいのに」
 「はい、はい」
 「綴君は、無条件に慕われてるしさ。至さんだってどんな格好でもかっこいいってさ。
 やっぱ男兄弟がいいの?
 私なんてさ咲貯金してるしさ、写真だってさ集めてるしさ、咲の似顔絵だったら1番上手く書けるしさ、ナポリタンだって1番美味しく作るもん」
 「だいぶ過激派で、至さん正直驚いてるんだけど」

 人に聞かせられるギリギリで言ってるし、なんだったらもっとあるんだけど。と、思いつつ続ける。

 至さんが聞いてくれるから。

 「咲に嫌われたら生きてけないよ、咲だけが希望だったのに。
 ご飯だってさ、全然味しなくなっちゃうんだよ。
 ご飯の味はまぁ、ぶっちゃけまぁ、どうでもいいんだけど」
 「ねぇ、芽李」
 「なに?」
 「一回、言ってみたらどう?」

 ばっと至さんの方を見る。

 顔の近さに一瞬驚きながらも、

 「至さん、話聞いてた?」
 「うん、聞いてた」
 「私、咲には、理性的ですごく頼りになる優しいおねぇちゃんでいたいのよ」
 「ぷっ、」
 「なんで笑うの」
 「いや、ふっ、はは」
 「さいてい」
 「ようは、芽李は、カッコつけてるんでしょ?」

 その言葉が悔しく思いながらも、どこか腑に落ちてる私がいる。

 「かっこつけてる、」
 「芽李さ、少しはそう言うところもあるだろうけど、咲に対して背伸びし過ぎなんじゃない?」
 「言いたいこと、わかんない」
 「無理してるってこと、それが咲也も伝わってるからそう言うこと言ったんじゃないの?」
 「無理してない」
 「繕ってるじゃん、色々。よく見せようと、頑張ってるのかもしれないけど、それって疲れない?
 家族に対してなら尚更、無理しなくたっていいんだよ」
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