第14章 冬桜
「なのにさ、咲ってば、春組のみんながいるから家族じゃなくていいって言うしさ、役者だからって何?
他人演じるってこと?それとも弟演じてくれるの?いや、それはなくない?
仲違いっぽくなってるのに、弟演じてくれるわけなくない?」
「うん、うん」
「シトロン君ずるくない?私を差し置いて咲と同じ部屋でさ、真澄君もずるいよね、なんで一緒に登校してんの?私だって小学校の時咲と手を繋いで登校したかったのに。咲に起こしてもらっちゃってさ、私が咲を起こしたいのに」
「はい、はい」
「綴君は、無条件に慕われてるしさ。至さんだってどんな格好でもかっこいいってさ。
やっぱ男兄弟がいいの?
私なんてさ咲貯金してるしさ、写真だってさ集めてるしさ、咲の似顔絵だったら1番上手く書けるしさ、ナポリタンだって1番美味しく作るもん」
「だいぶ過激派で、至さん正直驚いてるんだけど」
人に聞かせられるギリギリで言ってるし、なんだったらもっとあるんだけど。と、思いつつ続ける。
至さんが聞いてくれるから。
「咲に嫌われたら生きてけないよ、咲だけが希望だったのに。
ご飯だってさ、全然味しなくなっちゃうんだよ。
ご飯の味はまぁ、ぶっちゃけまぁ、どうでもいいんだけど」
「ねぇ、芽李」
「なに?」
「一回、言ってみたらどう?」
ばっと至さんの方を見る。
顔の近さに一瞬驚きながらも、
「至さん、話聞いてた?」
「うん、聞いてた」
「私、咲には、理性的ですごく頼りになる優しいおねぇちゃんでいたいのよ」
「ぷっ、」
「なんで笑うの」
「いや、ふっ、はは」
「さいてい」
「ようは、芽李は、カッコつけてるんでしょ?」
その言葉が悔しく思いながらも、どこか腑に落ちてる私がいる。
「かっこつけてる、」
「芽李さ、少しはそう言うところもあるだろうけど、咲に対して背伸びし過ぎなんじゃない?」
「言いたいこと、わかんない」
「無理してるってこと、それが咲也も伝わってるからそう言うこと言ったんじゃないの?」
「無理してない」
「繕ってるじゃん、色々。よく見せようと、頑張ってるのかもしれないけど、それって疲れない?
家族に対してなら尚更、無理しなくたっていいんだよ」