第3章 支那実桜
あらやだ、今の小中学生ってみんなこれなの?
可愛いな。
なんて、自分でも危ないと思ったのでそこで妄想を止める。
「アンタも、風邪ひくなよ。
ばーちゃん1人で切り盛りすんの大変だろうし。じゃあ、また。」
そう言って店を出た彼に、成長した後のいい男の面影を感じた。
「お客さん、帰った?俺もそろそろお暇するね」
空気を読んだように、中から出てきた月岡さん。
「あれ、お買い物は?」
「今日は苗の注文に来ただけだから。
おばあちゃんにお願いしてきたよ」
ひょこひょこと、トレードマークが揺れる。
「ツムちゃん、また来てねぇ」
後ろからヨタヨタとついてきたおばあちゃん。
近くにいた月岡さんが、そんなおばあちゃんを支えてくれる。
それに対して大したことないというように、またふんわりと笑って、お店の椅子に座るのを手伝ってあげていた。
ふわふわーっとたんぽぽの綿毛のように、漂うような優しさだった。
あいさつをしてから帰っていく、月岡さんの後ろ姿に私も"またお待ちしてます”と声をかけて、お見送りする。
「芽李ちゃん、ツムちゃんいい男の子だよねぇ」
ある程度手を振ったあと、おばあちゃんが私にニコニコと笑って言う。
「ふふ、ですね」
「左京ちゃんもいい子だけどねぇ」
おばあちゃんの含みのある、だけどふわふわした声にクスッと笑ってしまった。
まぁ、でも確かにここにきて知り合う人達、
みんな本当に顔だけはいいもんなぁ…などと思いつつ、作業をする。
性格は、………まだ、わかんないけど。
なんて、失礼なこと思いながら注文の品に取り掛かる。
ちょっとした花束なら、5分おも掛からずともできるようになった。
「おばあちゃん、ここって」
それでもやっぱり経験に勝るものはないらしい。
「どれ、貸してごらん。あぁあ、こうしてこうすると、…っ、
ほれ」
「なるほど…」
少しの手直しで、ガラッと雰囲気が変わる。
おばあちゃんから受け取ったまま、
くるくるっと、
ワイヤーで縛ってラッピングをする。
「芽李ちゃん、こっちもやってみて」