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3月9日  【A3】

第3章 支那実桜


 あらやだ、今の小中学生ってみんなこれなの?

 可愛いな。

 なんて、自分でも危ないと思ったのでそこで妄想を止める。

 「アンタも、風邪ひくなよ。
 ばーちゃん1人で切り盛りすんの大変だろうし。じゃあ、また。」

 そう言って店を出た彼に、成長した後のいい男の面影を感じた。

 「お客さん、帰った?俺もそろそろお暇するね」

 空気を読んだように、中から出てきた月岡さん。

 「あれ、お買い物は?」
 「今日は苗の注文に来ただけだから。
 おばあちゃんにお願いしてきたよ」

 ひょこひょこと、トレードマークが揺れる。

 「ツムちゃん、また来てねぇ」

 後ろからヨタヨタとついてきたおばあちゃん。

 近くにいた月岡さんが、そんなおばあちゃんを支えてくれる。

 それに対して大したことないというように、またふんわりと笑って、お店の椅子に座るのを手伝ってあげていた。

 ふわふわーっとたんぽぽの綿毛のように、漂うような優しさだった。

 あいさつをしてから帰っていく、月岡さんの後ろ姿に私も"またお待ちしてます”と声をかけて、お見送りする。

 「芽李ちゃん、ツムちゃんいい男の子だよねぇ」

 ある程度手を振ったあと、おばあちゃんが私にニコニコと笑って言う。

 「ふふ、ですね」
 「左京ちゃんもいい子だけどねぇ」

 おばあちゃんの含みのある、だけどふわふわした声にクスッと笑ってしまった。

 まぁ、でも確かにここにきて知り合う人達、

 みんな本当に顔だけはいいもんなぁ…などと思いつつ、作業をする。

 性格は、………まだ、わかんないけど。

 なんて、失礼なこと思いながら注文の品に取り掛かる。
 ちょっとした花束なら、5分おも掛からずともできるようになった。

 「おばあちゃん、ここって」

 それでもやっぱり経験に勝るものはないらしい。

 「どれ、貸してごらん。あぁあ、こうしてこうすると、…っ、
ほれ」
 「なるほど…」

 少しの手直しで、ガラッと雰囲気が変わる。

 おばあちゃんから受け取ったまま、
 くるくるっと、
 ワイヤーで縛ってラッピングをする。

 「芽李ちゃん、こっちもやってみて」
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