第3章 支那実桜
アレンジメントの注文だった。
花束よりも時間がかかってしまうのは、勿論だけど作り甲斐があって楽しい。
「店長、ここなんですけど」
「ここはねぇ、こうするとねぇ」
少し見せただけで、適当なアドバイスをくれるのもまた、勉強になって楽しい。
「へぇ!あ、じゃあこういう感じも?」
そこから思いつくアイディアも楽しい。
「いいわねぇ。腕が上がってきたんじゃないの?」
「師匠のご教授の賜物です、本当にありがとうございます」
ちょっと戯けて言ったけど、こんな短い期間で上達できたのはやっぱりおばあちゃんのおかげだから。
「やだわぁ、師匠だなんて。ふふふ」
優しくて朗らかで、私もこう言う歳の重ね方をしていきたいと思う。
「じゃあ、こっちも頼もうかしら」
その信頼が嬉しい。
「はい!」
「ここにこの葉物を使って、後は任せるわ。」
腕と人柄の良さがピカイチなおばあちゃんに教わったおかげで、半年という短い期間で様にはなってきたのかも知れない。
ストッカーに映る自分の姿は、少しだけ誇らしく見えた気がした。
ーーー
ーー
「できました!こんな感じで」
「まぁ綺麗!
だけど、ここをこうした方が…いいかもしれないわね?」
たしかに、角度が違うだけで華やかさが違う。
「なるほど…よし、次はもっとがんばります!」
私が好きなもの、大好きなこと。
大切なもの。
いつかおばあちゃんのことも、そしてお世話になった大家さんも
MANKAIカンパニーに招待したい。
満開に咲く笑顔の中に、私がお世話になった人もいてほしいから。
そのためには、確実に…
「ふふふ。
芽李ちゃん、気負い過ぎたらいけないわ。
何かあれば私も力になるからね」
そんな私を見透かすように笑うから、
私はまだまだで、
だけどこうして支えようとしてくれる人がいるから、
歩こうって、歩かなきゃいけないって思う。
それって、
なんてありがたいことなんだろう。
気負い過ぎずに頑張る、か。
つい張り切りすぎてしまう私には
難しいかも知れないけど、
そんな事を言って燃料を切らしていたら、もともこもないもんね。
そう思いながらもやっぱり意気込んでしまう私をみて、おばあちゃんはクスッと笑った。