第3章 支那実桜
この店の店長ことおばあちゃんは、いつもこうしてお客さんを中に招く。
誰でも懐に入れちゃうような、優しくて暖かい人。
だから、細々とでもやっていけるような人脈があるんだと最近になって思っている。
類は友を呼ぶ?
っていうより、類はお客さんを呼ぶ?
思えばおばあちゃんと月岡さん雰囲気似てるかも。
優しくて陽だまりみたいにあったかい…
なんて、
成人男性に失礼かな?
そんな月岡さんも初めはオロオロしていたのに、いまでは割とすんなり中に入ってくる。
月岡さんも、この雰囲気に慣れてきたみたいで、今ではこうして3人でお茶を啜ることも多くなってきた。
「ばーちゃーん」
他のお客さんも店に出ていなければ奥にいるというのはわかっているため、こうして声をかけてくれる。
「私行きますね」
「あらまぁ、ありがとうねぇ」
おばあちゃんはふんわりと笑って、月岡さんも微笑ましくこっちをみている。
2人の話している姿はもうホンワリしすぎて、私的なくしたくない日本の現風景として目に焼き付けて、店へと出る。
この店は奥に居住スペースがあって、手前にお店としてのスペースがあるため、少し声をかけてもらえれば即対応できるという、今は懐かしの昭和的店構えだったりする。
「あ、いらっしゃい。莇くん。今日はどうしたの?」
髪をハーフアップにして赤いジャケットをおしゃれに羽織る彼は左京さんの知り合いの子らしい。
「芽李さん、おはよう。また中にいたのかよ」
「うん、お客さんが来ててね。莇くんもあがってく?」
「いや、いい。また今度お邪魔させてもらう。今日は注文してたやつ、代わりに取りに来ただけだから。」
たまにこうして顔を見せてくれる彼は、最初はもうツンツンのつんで、そろそろ思春期なんだろと左京さんも言っていたけど何度か話をするうちに、名前まで覚えてくれるくらいには、仲良くなった。
「いつもながら本当にえらいね、おつかい」
そう言いながら先日注文を受けていた品をラッピングし彼に手渡せば、少しだけ手が触れてボンっと真っ赤になるのはココ最近良く見かけている。
「わぁ、冷たい。あったかくしてね、風邪ひいちゃうと困るし」
別段気にせずそういえば、餓鬼扱いしてじゃねーよと不貞腐れていう。