第14章 冬桜
「いや、…そっか、見てくれてたんだな」
「うん、バラエティにも引っ張りだこだね?」
「まぁな、なんでもこなさないと。全部、芸の肥やしだから」
「天馬君って太陽みたい」
「はぁ?何言ってんだよ」
「まっすぐで、あったかくてギラギラしてる」
「ギラギラって、」
「ふふ、…はぁ。でも、これでみんなの顔やっと見れた。帰ってきたーって、安心した」
ぽんぽんと、天馬君に頭を撫でられる。
「なに?」
「いや、…お疲れ様ってな」
「ファンに刺されないようにしないと」
「オレのファンはそんな過激じゃない」
「ははは、ごめんごめん。今、至さんお風呂に入ったけど、天馬君も行く?」
「そうだな、芽李さんは起きてるのか?」
「うん。もう少しだけね、至さんに夜食作んなきゃだから」
「そうか、ピザトースト?」
「そうそう、あと焼くだけなんだけどね」
と、皿に視線を向ける。
「ふーん、美味そうだな」
「今度作ってあげるね?」
「楽しみにしてる」
なんて会話をしていると、またドアノブを捻る音がする。
「あー、天馬。おかえり」
「至さん、ただいま」
「2人で何話してたの?」
「ピザトースト、今度作ってあげるねって話」
「じゃあ、オレもお風呂行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
「うん、ゆっくりしてきて」
「ありがとう」
行ってしまった天馬君の代わりに召喚された至さん。
「髪、乾かしてないの?」
「やってくれないの?」
ドサッとソファに腰掛けた至さん。
仕方ないなとオーブンのスイッチを入れてから、ドライヤーを持ち出す。
「優しくしてね」
「ハイハイ」
「天馬に怒られた?」
「ううん。凪いだ海のように穏やかだった」
「ワードチョイスよ。そか、まぁよかったね?」
「うん」
至さんの髪に触れる。
ふわふわしてて、けっこう好きな感触。
「至さんの髪、好きだな…」
「なんて?」
ドライヤーのせいで、ちゃんと聞こえなかったみたい。
ある意味ラッキーだ。
「なんでもない」
至さんは、ケータイでソシャゲをしている。
ちょうど乾いたかなって思うタイミングで、オーブンが鳴った。
「はい、乾いたよ。おしまい」
「ありがと」
「トーストもできたみたい」
「だな」